こんばんは。都議の栗下です。

 



昨日は、国における表現の自由議論で避けては通れない児童ポルノ法の制定についてお伝えしました。
今日は、石原都政下で進んだ規制強化の実態についてお伝えしします。


■R18マークも石原都政下


第10回のブログでお伝えしたように、2001年、石原都政下で最初の青少年条例改正が行われました。出版各社も石原知事の規制への積極姿勢に警戒を高め、「規制を迫られる前に」と「出版ゾーニング委員会」を業界として新たに発足。更なる自主規制を進めます。

90年代に生まれた「成年コミック」表示は主に、性描写に関して使われていましたが、「暴力・残虐描写」等、青少年の成長に相応しくない(と思しきもの)を分別するために「R18」表示が生まれたのもこの頃です。

01年の条例改正では、不健全図書指定を受けた書籍の区分陳列について義務付けると同時に、「青少年が閲覧し、または観覧することが適当でない旨の表示をしたものを陳列するときも指定図書と同様の措置をしなければならない」という一文が添えられていました。
つまり、R18マークを新たにつけたものも区分陳列義務の縛りを受けることになります。

 

現在の指定図書類等の区分陳列の方法(東京都青少年の健全な育成に関する条例及び同施行規則の一部抜粋:都民安全推進本部)

 

 

「出版ゾーニング委員会」を主導したのは出倫協(出倫協についてはブログ第3回参照)ですが、このあまりにも絶妙なタイミングの良さに、出版各社からは、出版業界の味方のはずの出倫協が、東京都行政にコントロールされ規制が進められているのではと危惧する声も上がったそうです。


■宝島訴訟(2000)


当時は東京都が出版社に対してかなり強い姿勢で臨んでいたと言います。

関係性を知る上でわかりやすいのが、2000年に宝島社が不健全図書指定を巡って都を訴えた宝島訴訟事件です。
この訴訟は、宝島社が出版したパソコン雑誌二誌の不健全図書指定取り消しを求めて都を訴えたものです。


宝島社が都に謝罪に赴かなかったことに腹を立てた職員が、「また指定してやる」と言う発言をしたと言う噂も流れました。

不健全図書指定は連続3回受けると、出版社は該当紙を「帯紙措置」をしなくてはなりません。帯紙をつけて「18歳未満の方にはお売りできません。」としなくてはならないのですが、販路が大幅に制限される事もあり、これは事実上の「廃刊」と言われていました

宝島社の2つの雑誌はその後、宣言通り連続3回の指定を受け、最終的には廃刊に追い込まれました。
裁判では「青少年保護のためには知る権利に一定の制約も必要」として宝島社の訴えは棄却・敗訴となりました。

噂となった都職員の発言が事実とするならば、条例運用の公平性を根幹から揺るがすもので断じて許されるものではありません

先日私も指定を受けた出版社の方とお話ししたところ、令和の現在においてはそういったことは無いが、「かつては指定を受けるたびに都庁に謝りにいかなくてはならなかったのは本当」と言っていました。条例の恣意的運用がまかり通れば、本来の目的が果たされないことはもとより、表現の自由を脅かすこととなります。この点については今後もしっかりと目を向けていかなくてはなりません。


■石原都政下2回目の条例改正(2004)


03年、石原知事は不健全図書類の効果的規制のあり方を検討するように青少年問題協議会に諮問しました。
04年、協議会から出された答申に従って、東京都は条例改正案を策定することになります。

改正の主なポイントは、
不健全図書に対する「包装」の義務化(罰則あり)と、表示図書・類似図書(出版社が自ら成年向けであると判断した図書)に対する「包装」の努力義務化。
都知事が出版社に対して自主規制を要求できる勧告権の追加、書店などへ一般人が立ち入り調査を行う「青少年健全育成協力員」制度でした。


2001年の改正でも反対の声が巻き起こったように、今回も大きな議論を呼び、コミケでの大規模な署名運動も行われました。

しかしながら、3月に開かれた議会の採決では自民・公明・民主・生活者ネットにより賛成、共産党と1人会派のみが反対しました。

この条例改正で最も大きな影響を与えたのは「個別包装」でした。


当初、成年向け雑誌にはビニール包装をおこなうことが検討されていましたが、コストの関係上出版社からの要請でテープによる「小口止め」が行われるようになりました。しかしながら、小口止めのコストも一冊あたり10円以上と影響が大きかったことから、値上げをしなければならなかったり、廃刊に追い込まれてしまった雑誌もあります。



現在の指定図書類等の包装の方法(東京都青少年の健全な育成に関する条例及び同施行規則の一部抜粋:都民安全推進本部)

(条文上は)わずかな条例改正が業界に対して甚大な影響を与えることになりました。

当時、コンビニで売られていた成年向け雑誌が小口止めされるようになり、都民から見ても、石原都政下で規制強化が進んでいるという実感を与えたのでは無いでしょうか。
 ーー

こうして、2度目の条例改正を行った石原知事、その後勢いを増してその後3回の条例改正に突き進んでいきます。

明日はいわゆる酒鬼薔薇事件がきっかけで起こった国の法規制騒動についてお伝えします。

続く。