こんばんは。都議の栗下です。



昨日は法規制の検討から地方条例の制定にシフトした経緯についてお伝えしました。

今日はいよいよ東京都での青少年条例制定についてお伝えします。


■賛否を巡る都議会でのバトル



東知事から諮問された青少年問題協議会(昨日のブログ参照)は翌年64年4月までに議論を重ねます。

令和の現在も続くこの協議会には都議会議員も含まれており、実質的にはこの段階から都議会各会派による議論が始まりました。

当時の多数を占めていた自民党都議は「環境の浄化は長い間叫ばれてきたが、改善されないので措置が必要」という主旨で賛成。

そのライバルであった社会党の都議は「青少年の権利や憲法との兼ね合いもあり慎重な議論が必要」という趣旨で反対の立場を取りました

その他様々な意見が出たものの、協議会の結論である答申は「有害出版物等の排除措置を求める」として知事に提出されました。


■反対運動の激化

一方で反対派も「出版社の殆どが所在する東京都において規制条例が作られたならば、大変なことになる」との危機感から、対応を進めていました。63年12月には書籍協会の呼びかけで、雑誌協会、取次協会、小売全連の4団体が「出版倫理協議会」(出倫協)を立ち上げます。

出倫協の発足声明の中で、「低俗出版物は全体の中では僅かであり、業界の努力で世論に応え、出版の自由と責任を守る」という主旨のメッセージを発信し、都議会に対しても「条例による規制には絶対反対」として陳情を行いました。


この時にできた出倫協はその後の規制議論においても影響を与えていくこととなります。

都議会に議案が提出されたのは前述の協議会から2ヶ月後の6月ですが、この時には社会的にも大きな注目を集め都議会にも数百人規模の陳情が相次いだと言います。現在と単純に比較することはできませんが、これほどの陳情が行われるのは極めて異例のことです。



■修正案の成立

都議会での大きな争点は、出版社等の自主規制に関する規定を設けた点や不健全図書指定制度が盛り込まれた点でした。

委員会における議員で自民党8名が賛成、社会党4名、公明会(後の公明党)2名、共産党1名が反対。委員長は採決に加われないので賛否が拮抗し、議論は平行線を辿ったことから会期末まで結論が出ず、会期が延長される異例の事態となります。


最終日の7月27日、廊下まで溢れる多くの傍聴人、怒号が飛び交い現場は騒然としていたといいます。

その日も質疑が行われましたが結論が出ず、与党による強行採決が行われるかという時に、公明会が修正案を提出します。

修正案された点は、

立ち入り調査を行う者から警察官を除く、審議会の運用の中で、自主規制をやっている関係団体の意見を聴く、不良出版物等の認定基準の中にある「粗暴性」「恐怖感」という文言を取り除くというものでした。


社会党、共産党は反対したものの、公明会が加わったことで賛成多数により可決。同日に本会議でも可決され、ついに東京都青少年健全な育成に関する条例が成立、10月1日の施行が決定されました。



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ついに東京都でも青少年健全育成条例が成立しました。

まだ都庁が丸の内にあった時代ですが、会期を延長してまでの論争が議員同士の掴み合いまで発展したこともあったといいますから、制定を巡る攻防の激しさがひしひしと伝わってきます。

明日は都条例制定後の影響についてお伝えします。