新幹線内で、到着後の段取りを決める。
品川駅へ着き、その足で古巣へ向かう。
精神を病んでしまったことで、
中途半端な状況、時期に辞めてしまった場所へ。
10年以上前からお世話になっていながら、
丸3年、連絡を閉ざしてしまっていた場所。
寄り道もした、道を踏み外しもした、
が、遠回りをして帰ってきた。
「おお」
気を遣ってか遣わずか、何も無かったように接してくれる温かい場所。
近況を話し合う内に、オーディション会場まで送ってもらえることに。
21:20から始まるオーディション。
狙った演出かのように、シトシトと小雨が落ちる旧築地市場。
「…えぇやん」
オーディション会場となった貸しスペースへ到着すると、すでに集まった応募者たち。
しのぎをけずる敵でありながら、同じ道を志す戦友たち。
敵意を剥き出しにして「芝居で全員殺してやる」と息巻いていたあの頃。
が、今は違う。
数多ある職業から、俳優を選び、同じ苦悩を持つであろう同志たち。
あの頃はなぜ認めてあげることができなかったのか。
きっと自分が、苦しくなるまで真剣ではなかったから。
「強さ=優しさ」
生きていく中で、感じたこと。
誰にも負けない強さと、全てを守れる優しさが欲しい。
6年以上ぶりの、
受けたくて受けたくてたまらなかったオーディション、
無事に全力を出し切ることができた。
イメージが合わなかったら仕方ない。
作品の裏で動く、政治に負けたら仕方ない。
果報は寝て待て。