1月14日、世田谷トリオのネフェルライブがおこなわれた。
彼らは、3時ちょっと前にネフェルにあらわれた。
レギュラーユニットなので、ほとんどリハ無しだ!
3時半ぐらいから、今冬一番の寒さにもかかわらず、《世田谷トリオ》を聴きたくて、多くのお客さんがネフェルにやって来た。
演奏は、『I Love You』から始まった。
いきなり、ぶっ飛び演奏である!!!
アヴァンギャルド系の曲ではなく、オーソドックスなこのスタンダード曲を緩急自在に料理しジェットコースター的展開になったり、地底に深く深く沈潜していく様になったり、驚きの連続である。
岩見継吾さんのベースは、鳴るというより唸るという表現が正しいほどにネフェル空間を激しく揺するのだから、たまらない。
プロレスラーのような強靭なガタイ、4本の太い弦をかき鳴らす腕のその太さは、ぼくの3倍くらいありそうだ。
彼がネフェルにあらわれた時、握手をしたのだがそのクマのような手のひらと指に握り潰されそうになった。
その彼が、ベースを愛撫するというよりは身体全体でベースに挑みかかり格闘するような姿でグワングワンとやるのだからたまらない。(彼のベースは、150年前のチェコスロバキア製だという)
その時の表情がまた素晴らしい。ベース演奏が三度の飯よりも好きだという表情だなあ・・。
彼はチャーリー・ミンガスが大好きだと言っていたが、太い音と、滲み出る雰囲気とがまさにミンガスだ。
三曲目の『Our Spanish Love Song』(チャーリーヘイデン作曲)の演奏が始まる前に、額から滴り落ちる大粒の汗をタオルで拭い、Tシャツ一枚になった。
皆に寒いといわれるネフェル室内で、このベーシストはTシャツ一枚になり、熱いジャズを創り出す。
ネフェルでも「これでもか、これでもかっ」と、はじけまくったドラマー、吉良創太さん。
『これからのジャズはドラマーが創る!!』というぼくの信念を実感させてくれるドラマーだ。
何か所かで創太さんのドラムソロがあった。
ぼくは、素晴らしいドラマーとそうでないドラマーの判断基準は、「もっと聴きたいドラムソロ」と「もう止めてくれドラムソロ」だと考えている。
素晴らしいドラマーはそこにそれこそ起承転結のドラマがあり、たとえば10分ぐらい聴いていても飽きないのだ・・・。
空間を埋め尽くす吉良創太さんのドラミングを間近でじっくりと聴いたが、今回発見したことがある。
それは、バスドラ・スネアドラム・タムタム・ハイハット等の音程の違いをとっさに考慮してその曲のメロディーにあったタイコを瞬時に選び叩いているのである。
これは当然、曲を熟知していなければできないし、瞬間的な閃きがないとできない、と思う。
マックス・ローチやエルヴィン・ジョーンズ等天才ドラマーにそれを感じるのだが、吉良創太さんにも同じものを感じる。
『Giant Steps』(ジョンコルトレーン作曲)
このラテン・リズムのカーニヴァル系のノリは、もしコルトレーンが聴いたら、超驚くだろうなあ・・・。
高橋佑成さんのピアノには、今回も驚かされた。
実にフレキシブルなピアノプレイだけじゃなく、アレンジも素晴らしい。
ノッテ来た時の前のめりになる激しく強いタッチ、88の鍵盤の上での軽やかなダンスにはゾクゾクさせられるし、『Amapola』や『Imagine』等心に響く哀しげで情熱的なバラードでは身も心もとろけてしまいそうになる。
翳りのある耽美的な演奏もたまらない。
彼ら三人が織り成すピアノトリオは、『ビル・エバンスとスコット・ラファロとポール・モチアン』のようなスリリングなインタープレイ満載で、三位一体となり丁々発止の応酬を見ていると、それぞれの楽器が対等な関係で成り立っているんだなあと、実感する。
エナジー迸るこの世田谷トリオは、ここが魅力なんだなあ・・・、と僕だけじゃあなく今日のお客さんも皆思ったに違いない。
彼らの《Live Bootleg Vol 1》を購入した。
最後に、ミュジシャンと一緒にパチリ!
岩見継吾さんが、別れ際に云った。
「今日は最高でした。最高のお客さんの前で最高の状態で演奏できて、とてもうれしかったです!!」
「ビールとジャズは生に限るなあ・・・」
彼らはニューアルバムを作り終えたばかりなので、世田谷トリオ・ニューアルバム発売記念ライブをまたネフェルでやってもらうつもりだ・・・。