【台風19号】「人命」より「住民票」? ホームレス避難所拒否で見えた自治体の大きな課題 | Just One of Those Things

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本題に入る前に、現時点において、

低気圧の影響で、千葉県や茨城県、福島県の一部では、わずか半日で1か月分の雨が降る大雨となりました。引き続き土砂災害や川の氾濫などに厳重な警戒が必要です。台風19号の豪雨による被災地は特に警戒してください。
参照:千葉 茨城 福島で半日で1か月分の雨 氾濫などに厳重警戒を

 

 

科学オタクの主婦が危機感から一人でこねまくっております、危機管理シリーズより、自然災害編。

 

検証シリーズではなく、事例シリーズです。

 

今回は、台風20号・21号で挙げられなかったデータを取り上げます。

 

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【台風19号】「人命」より「住民票」? ホームレス避難所拒否で見えた自治体の大きな課題
2019/10/13 13:40 AERAdot.
 

©Asahi Shimbun Publications Inc. 提供 猛雨の中、浅草寺近くの横断歩道を歩く人たち(c)朝日新聞社

 全国各地に甚大な被害をもたらした台風第19号。東京都内でも各地に避難所や自主避難施設が開設され、多くの人が避難した。そんななか、台東区では「ホームレス」と呼ばれる路上で生活する人々が、避難所での受け入れを拒否される事例があった。

 10月12日午後、強まる雨を受けて、路上生活者支援などを行う団体「あじいる」は、上野駅周辺の野宿者らにタオルと非常食、避難所の地図を配った。同団体の中村光男さんはこう話す。

「かなり雨も強まってきて、テレビやラジオでは不要不急の外出を控えるよう頻繁に呼び掛けている。路上で過ごしている人の様子が心配でした」

 中村さんらは台東区立忍岡小学校で職員が避難所開設準備を進めていることを確認し、路上生活者のもとを回ったという。しかし、非常食や地図を配り終えようかというところで、「住民票がないから避難を断られた」という路上生活者の男性に出会った。

 災害対策本部に問い合わせたところ、「路上生活者は避難所を利用できないことを対策本部で決定している」との返答だったという。中村さんらは、再度、路上生活者のもとを回って事情を説明し、謝罪した。

「なかには、私たちから地図をもらって避難所へ行ったけれど、断られたという人もいました。ぐしょぬれになりながら避難所へ行って断られ、また戻ってきた人たちもいます。私たちや行政に嫌みを言うこともなく、諦めているような様子でした」

 台東区では12日、自宅での避難が不安な区民のための避難所を4カ所、外国人旅行者などを念頭に置いた帰宅困難者向けの緊急滞在施設を2カ所に開設した。

 避難所では氏名・住所などの避難者カードへの記入を求め、「住民票がない」と答えた路上生活者の受け入れを拒否したという。

「避難所に詰めている職員から災害対策本部に対応の問い合わせがあり、災害対策本部の事務局として、区民が対象ということでお断りを決めました」(台東区広報担当)

 台東区は、「差別ではなく住所不定者という観点が抜けていた。対策の不備」と強調するが、避難所を訪れた路上生活者の受け入れを拒否する際に、旅行者向けの緊急滞在施設を案内することもなかった。さらに、風雨が強まり、警戒レベルが「避難準備・高齢者等避難開始」に引き上げられても区は対応を変えなかった。
 
 あじいるの中村さんはこう憤る。

「避難所の窓口で慣行として断られたというのならまだわかる。ただ、災害対策本部の事務局として対応を検討し、拒否を決めたとなると行政が命を軽んじているとも言え、あり方としては深刻です」

 災害法制などに詳しい弁護士の津久井進さんによると、人道的な観点から問題があることはもちろん、台東区の対応は法が定めた原則からも大きく逸脱しているという。

「災害救助法では、事務取扱要領で現在地救助の原則を定めています。住民ではなくても、その人がいる現在地の自治体が対応するのが大原則。また、人命最優先を定めた災害対策基本法にも違反する。あり得ない対応です」

 ほかの区はどの様に対応したのだろうか。例えば渋谷区は、「原則として区民の方が避難する場として開設している」としながらも、「人命にかかわる事態で、拒否することはない」という。今回の台風でも、避難者名簿へ住所の記入がない人がいたが、区民と同じように受け入れた。

 平成30年1月の調査によると、東京都内の路上生活者は1242人。首都直下地震が起きれば、さらに多くの路上生活者が避難所を訪れることも考えられる。

 津久井弁護士はこう懸念する。

「災害対策が進んでいると自負していた東京都でさえ、基本原則が理解されていない現場があることが露呈した。法律の趣旨原則に通じていない自治体が次なる大災害に対処できるのか、極めて強い不安を覚えます。同時に、法律が複雑なうえ、災害救助法は昭和22年に制定された古い法律です。国も、さらなる法整備を進める必要があるでしょう」

(文/編集部・川口 穣)
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15日、台東区長がホームレスへの対応について謝罪しました。

 

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台東区長、ホームレス拒否で謝罪
台風避難所、「対応が不十分」
2019/10/15 18:33 (JST) 共同通信社
 

©共同通信社 東京都台東区の服部征夫区長=2016年7月
 
 東京都台東区の服部征夫区長は15日、区が台風19号で自主避難所に避難しようとした路上生活者(ホームレス)の利用を断ったことに「対応が不十分で避難できなかった方がおられたことについて、大変申し訳ありませんでした」との謝罪コメントを出した。

 台東区によると、台風が首都圏に近づいていた12日午前、区立忍岡小学校に相次いで避難しようとした男性3人に、職員が住所や名前を確認したところ、1人は北海道と答え、ほかの2人は「住所がない」と答えたため「区民が対象で、それ以外の人は受け入れない」として利用を断った。

 服部区長は「今回の事例を真摯に受け止める」としている。
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避難を断られたホームレスではありませんが、荒川の河川敷に住むホームレスは、台風の夜をいかに過ごしたのか、文春オンラインが、18日に記事を挙げています。

 

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荒川の河川敷に住むホームレスは、台風の夜をいかに過ごしたのか
水谷 竹秀 2019/10/18 11:00 文春オンライン

 ブルーシートに覆われた小屋の側には、水浸しになったぼろぼろの革靴や黒焦げの魚焼き網、新聞紙、段ボール、ビニール袋などが雑然と積まれていた。へどろが溜まった足下はまだぬかるんでいる。周辺に生い茂っていた木々や雑草はしなって倒れたままで、その光景が台風の威力を物語っていた。
 

© 文春オンライン  

■米寿目前という年齢を感じさせない

 冷たい小雨が降っていた10月14日夕、87歳の路上生活者、立花さん(仮名)は、浸水被害の後始末に追われていた。

「水位が腰の高さまで上がり、パンツが濡れるぐらいでした。小屋の中で濡れちゃった新聞紙や段ボールなどはまとめて外へ出しました」

 その作業のせいで、立花さんが着ている茶色いジャンパーや長ズボン、長靴は泥だらけだ。

「こういうのは慣れていますよ。昔土方やっていたから」

 しゃがれ声でそう話す立花さんは、余裕の笑みすら見せる。肌つやがよく、米寿目前という年齢を感じさせないたくましさに溢れているのだ。

 近くに並ぶ工事用フェンスには、黒いジャンパーや毛布が何枚も干されていた。このフェンスは国土交通省が8年前、路上生活者追い出しを目的に実施しようとした工事で設置されたもので、工事自体は立花さんら路上生活者たちの抵抗で阻まれたが、フェンスは今も残っている。

 ここは東京都東部を流れる荒川河川敷の一角である。木々や雑草に覆われた「ジャングル」のような場所に、立花さんともう1人の路上生活者(79歳)の2人が、ブルーシートの小屋を建てて10年ほど前から住んでいる。

■「立花さんのところが大変なことになっている」

 私は山谷地域の取材を長らく続けている関係で今年5月、立花さんと出会った。若い頃から山谷の簡易宿泊施設で暮らしていた元日雇い労働者で、バブル崩壊以降、仕事が減って荒川河川敷へ移ってきた。そんな立花さんに、山谷の昔話を聞かせてもらうため、私は度々この場所を訪れていた。ところが台風19号が関東地方を直撃した後、関係者から「立花さんのところが大変なことになっている」と知らされ、飛んできたのだ。

 台東区が路上生活者の避難所入りを拒否した問題が騒がれる中、荒川河川敷でひっそり暮らす路上生活者たちは、それぞれの小屋が浸水被害に見舞われていた。水位が上がった川から泥水が押し寄せてきたためだ。堤防の決壊こそ免れたものの、屋根まで浸水した小屋もあったという。

 河川敷の周辺には、路上生活者227人(2019年夏現在、荒川下流河川事務所調べ)がブルーシートに覆われた小屋などで生活をしている。立花さんたちは10月12日、路上生活者らを支援する民間組織「山谷労働者福祉会館活動委員会」(台東区日本堤)の会館建物で一晩を過ごした。委員会のメンバーが迎えに来たワゴン車に乗り、一時的に避難していたのだ。

 この委員会は、山谷でもっとも古い活動家の組織で、年末年始に行う恒例の炊き出し(別名、越年越冬闘争)には、れいわ新選組の山本太郎代表が毎年視察に訪れている。

■路上生活者たちはスマホを持っていない

 委員会は台風が上陸する2日前、公益財団法人城北労働・福祉センターの娯楽室の夜間開放を要請した。センターは、台東区と荒川区にまたがる山谷地域の中心部にあり、日雇い労働者に職業紹介を行っている。その地下1階にある娯楽室は平日午後8時半まで、周辺に住む路上生活者や生活保護受給者の憩の場として利用が可能だ。しかし、委員会の要請は受け入れられず、台風直撃当日は正午で閉館。路上生活者たちは閉め出される形となった。

 委員会は、台東区役所にも問い合わせたが、「区の避難所は基本的に路上生活者をお断りしている」という回答だったため、会館建物を開放し、立花さんら路上生活者約20人を緊急に受け入れた。

 会館には宿泊せず、荒川河川敷近くの公園や「自分の隠れ家」へ避難した路上生活者も多数いたという。路上生活者たちはそもそも、スマホを持っていないなどネット環境がないため、各区が指定する避難所の場所すら分からない人も多い。

■「人権を無視」「差別」と非難

 路上生活者の避難拒否問題を受けて、委員会のメンバーと路上生活者らは台東区役所を訪れ、危機・災害対策課の係長に直接抗議した。区の対応について、委員会のメンバーはこう非難する。

「山谷地域もあるので、特に台東区には路上生活者が多い。その状況を認識しているべきなのに、人権を無視した態度を取ったことに対しては許せない」

「路上生活者たちは人間扱いされていないと憤っている。自分の命を守るために、近くに避難所があったら避難するのは当然」

「あいつらは税金を支払っていないから追い出して当然だ、というメッセージを発したと受け取られても仕方がない」

 立花さんも、人づてでこの問題については耳にしていたようで、私の取材にこう語った。

「路上生活者っていうのは、やっぱり人間じゃないんだよね。差別だよね」

■猫と一緒に屋根で過ごす

 台風一過となった翌13日、立花さんが荒川河川敷に戻ってくると、小屋が腰の高さまで浸水していた。

「堤防のほうから見ると、本流のほうはものすごい勢いで流れていました。あの時が川の勢いは最高潮だったかもしれない」

 立花さんは普段、空き缶拾いと月に数日の日雇い労働をこなし、生活を続けている。生活保護は受けていない。だが、浸水の影響で、空き缶拾いにも行けない。とりあえずは小屋の上に避難した。

 小屋の広さは2メートル四方で、高さは1.5メートルほど。台風襲来時を考えて、ベニヤ板を何重にも張り合わせて低く作っているため、少々の風圧ではびくともしない。今回の台風襲来時にも、その頑丈ぶりを発揮した。

 ずぶ濡れになって小屋に入った立花さんは、浸水を免れ、中に置いてあったカセット式ガスコンロ、鍋などの調理器具、ペットボトルの水、即席ラーメン、コッペパン、インスタント米など食料2日分を取り出し、小屋の上まで運んだ。

「水がたまっているんだからさあ、何もやることができない。とりあえず必要な物を上にあげ、寝るために乾いたシートを敷きました」

 立花さんは猫を2匹飼っているため、その餌も一緒に用意した。あの強風にもかかわらず、無事だった。

「水が上がったから1匹は高い所へ逃げていました。もう1匹は、小屋の中に浮かんでいた布団の上にいました」

 屋根に上った立花さんは、正午ごろから猫たちとともにそこで過ごした。

「すぐ横になって寝ちゃったんだよ。でも夜はあまり熟睡できなかったねえ。だいぶ水が引いてきたのがわかったけど、どうせ降りてきたって寝るところないんだから。下は水浸しで何もかもびしょ濡れだからね。2日ぐらいはかかると思ってたからさあ」

■「自分勝手にやってきたから、行政の世話にはなりたくない」

 翌朝午前5時ごろ目覚めると、想定していたより早く水が引いていた。小屋の床部分は水浸しになっていたため、修復しなければならない。自転車に乗って付近のゴミ置き場から段ボールを集め、ついでに空き缶も拾った。小屋の中で水浸しになった日用品や新聞紙などをすべて引っ張り出し、そこに拾ってきた段ボールを敷き、ブルーシートをかぶせた。まだ水浸しになっている衣類や毛布などがあるため、天候に応じて少しずつ乾かしていくつもりだ。

「野宿していれば色々なことはあるよね。このくらいのことはしゃあない。まだこういう小屋があるだけましなほう。ない人はもっと大変だよ」

 長年路上生活を経験しているからか、立花さんの語り口は実に平然としている。たとえば取材の最中に私が「何かお手伝いしますよ」と伝えても、「いや、大丈夫です」とまず断られる。生活保護を受給していない理由も「今まで自分勝手にやってきたから、行政の世話にはなりたくない」と言い、とにかく他人に迷惑を掛けたくないオーラを全開にしてくるのだ。

 そんな立花さんは翌日から早速、空き缶拾いに行くのだという。

「行かなきゃ飯食えない。体も動かさないとね。アルミ缶拾いでも多少は動いていればお金にもなるし」

 立花さんは今日も早朝から自転車を漕いでいるのだった。

写真=水谷竹秀
(水谷 竹秀)
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≪NHKのコンテンツ≫

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