進化遺伝学:正常な食道組織におけるがん変異 | Just One of Those Things

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前回に引き続き、2019年度の3号目のネイチャーのハイライトより。

 

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進化遺伝学:正常な食道組織におけるがん変異
Nature 565, 7739
2019年1月17日

正常な非がん組織で腫瘍発生を促進する可能性があるがん遺伝子の体細胞性変異について調べるために、そうした正常組織を解析することに関心が高まっている。皮膚や造血系では、正常組織内にがん変異を持つクローンの増殖が見られ、そうしたクローンが加齢に伴って蓄積することが以前に報告されている。小川誠司(京都大学)たちは今回、正常な食道組織で同様の変異を見いだしている。正常な食道組織ではNotch変異を持つクローンの増殖が認められたが、それらには食道がんに進行するものとしないものがあることが分かった。変異を有するクローンは幼少期から生じ、加齢に伴いその数とサイズが増加して、最終的に食道上皮のほぼ全面を占めるようになる。変異型クローンはまた、多量の喫煙や飲酒などのリスク因子とも関連付けられた。

Article p.312
News & Views p.301
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加齢に伴う正常組織の遺伝子異常とがん化のメカニズムを、京都大学が解明 | 大学ジャーナル

 

この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

日本語版本誌では、「医学研究:正常細胞とがん細胞で変異の性質は異なる」と題され、見出しにおいては、「遺伝的変異ががんにつながるかどうかを決めるものは何なのか。今回、ヒト食道の健常な細胞の分析から、加齢とともに高レベルな遺伝的変化が生じるが、通常はこうした変化はがんにつながらないことが明らかになった。」と取り上げられました。

 

フルテキストを直訳しますと・・・

 

食道の正常細胞とがん細胞では変異が異なります
 

となり、見出しを直訳しますと・・・

 

遺伝子変異が癌につながるかどうかを決定するものは何ですか?人間の食道の健康な細胞の分析は、人々が加齢するにつれて高レベルの遺伝的変化が起こることを明らかにしていますが、これは通常は癌を引き起こしません。
 

となります。

 

フルテキストは下記です。

 

Full Text:News & Views p.301

Mutations differ in normal and cancer cells of the oesophagus


本論文においては、日本語版本誌では、「進化遺伝学:変異型がんドライバーによる、加齢に伴う食道上皮の再構築」と題されてます。

 

フルテキストを直訳しますと・・・

 

変異がんドライバーによる食道上皮の加齢に伴うリモデリング
 

となり、Abstractを直訳しますと・・・

 

高齢の正常組織におけるクローンの拡大は、がんの発生に関係しています。ただし、拡張の年表とリスク依存性はほとんど理解されていません。ここでは、682個のミクロスケールの食道サンプルを集中的にシーケンスし、生理学的に正常な食道上皮において、ドライバー遺伝子(主にNOTCH1)の変異を保持するクローンの進行性の年齢関連の拡大を示します。これは、アルコール消費と喫煙によって大幅に加速されます。ドライバー変異クローンは幼少期から多病巣性に出現し、加齢とともにその数とサイズが増加し、最終的には非常に高齢の食道上皮のほぼ全体を置き換えます。食道がんの突然変異と比較して、生理学的に正常な食道上皮では、NOTCH1およびPPM1Dの突然変異が著しく過剰に表現されています。これらの突然変異は、思春期後期(幼児期の早期)に獲得され、大量の喫煙と飲酒により著しく増加します。ドライバー変異クローンによる食道上皮のリモデリングは、通常の加齢の避けられない結果であり、ライフスタイルのリスクに応じて、がんの発生に影響を与える可能性があります。
 

となります。

 

Notch 1 - Wikipedia(英文)

おまけ:Science Signaling Japan by COSMO BIO - 神経科学 神経活動のためのNotch

PPM1D - Wikipedia

おまけ:がん原遺伝子産物PPM1Dの細胞がん化機構および創薬を指向した阻害剤 | 公益社団法人 日本生化学会

 

フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。

 

Full Text:Article p.312

Age-related remodelling of oesophageal epithelia by mutated cancer drivers

 

Data availabilityによりますと・・・

 

すべてのWES、WGS、およびSNPアレイデータは、それぞれ受託番号EGAS00001003008、EGAS00001003281、およびEGAS00001003331で欧州ゲノム現象アーカイブ(http://www.ebi.ac.uk/ega/)に登録されています。数値および拡張データ数値のデータは、ソースデータとして利用できます。他のすべてのデータは、合理的な要求に応じて対応する著者から入手できます。
 

 

究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「構造生物学:HIVが共受容体と結合する過程を可視化する」を取り上げます。

 

 

※巡回等が大変遅れています。申し訳ございません。

 

 

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