有機化学:一方のキラリティーのみを得る新しい方法 | Just One of Those Things

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前回に引き続き、2018年度の51号目のネイチャーのハイライトより。
 

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有機化学:一方のキラリティーのみを得る新しい方法
Nature 564, 7735
2018年12月13日

キラリティーは、小分子からDNAの右巻きらせんまで、生命体の重要な特徴である。ラセミ混合物から単一のエナンチオマーを得ることは合成における基本的目標であるが、エナンチオマーの縮退性のために、どちらか一方のエナンチオマーに有利な平衡はあり得ない。今回T Bachたちは、同一化合物のラセミ混合物からの単一エナンチオマーの形成を可能にする光化学的脱ラセミ化を報告している。光を照射すると、キラル増感剤からアレン基質へとエネルギー移動が起こる。この過程は、2つのエナンチオマー間で異なるので、ラセミ体の片方のエナンチオマーだけが選択的に変換され、単一のエナンチオマーが得られる。

Letter p.240
News & Views p.197
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エナンチオマー - 薬学用語解説 - 日本薬学会

 

この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

日本語版本誌では、「有機化学:励起という不斉合成のツール」と題され、見出しにおいては、「今回、可視光によって駆動される触媒過程によって、アレンと呼ばれる化合物の鏡像異性体の混合物が、単一の鏡像異性体に変換された。これは、合成化学の研究に道を開く。」と取り上げられました。

 

フルテキストを直訳しますと・・・

 

不斉合成のためのエキサイティングなツール
 

となり、見出しを直訳しますと・・・

 

可視光により駆動される触媒プロセスは、アレンと呼ばれる化合物の鏡像異性体の混合物を単一の鏡像異性体に変換し、合成化学の研究の道を開く。
 

となります。

 

フルテキストは下記です。

 

Full Text:News & Views p.197

An exciting tool for asymmetric synthesis

 

本論文においては、日本語版本誌では、「有機化学:可視光を用いる増感励起によるキラルアレンの触媒的脱ラセミ化」と題されています。

 

フルテキストを直訳しますと・・・

 

可視光による増感励起によるキラルアレンの接触脱ラセミ化
 

となり、Abstractを直訳しますと・・・

 

キラル化合物は、互いに重ね合わせることができない鏡像であるエナンチオマーとして存在する。エナンチオマー的に純粋なキラル化合物[1]の重要性のために - 例えば活性医薬成分として - ラセミ体(エナンチオマーの1:1混合物)の分離が広く行われている[2]。しかしながら、しばしば、キラル化合物の単一のエナンチオマー形態のみが必要とされ、それはラセミ化合物をいかにして単一のエナンチオマーに選択的に変換することができるかという問題を提起する。このような脱ラセミ化[3]プロセスはエントロピー的に好ましくなく、溶液中の従来の触媒では実行できません。ここで我々は、触媒量(2.5モル%)のキラル増感剤の存在下で可視光(波長420ナノメートル)での照射を使用して高いエナンチオ選択性でキラル化合物を光化学的に脱ラセミ化することが可能であることを示す。本発明者らは、17個のキラルラセミアレンのアレイを、89〜97%のエナンチオマー過剰率でそれぞれの単一のエナンチオマーに変換した。増感剤は、アレンへの三重項エネルギー移動によって、2つのエナンチオマーについて異なるエネルギー移動効率で作動すると仮定されている。従ってそれは一方のエナンチオマーを変換するが他方のエナンチオマーを変換しない一方向触媒として働き、そしてエントロピーの減少は光エネルギーによって補償される。光化学的脱ラセミ化は、同じ化合物のラセミ混合物からのエナンチオ純粋な物質の直接形成を可能にし、非対称を作り出すという挑戦への新規なアプローチを提供する。
 

となります。

 

フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。

 

Full Text:Letter p.240

Catalytic deracemization of chiral allenes by sensitized excitation with visible light

 

Data availabilityによりますと・・・

 

この研究の調査結果は、論文とその補足情報に含まれています。
 

 

究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「文化進化学:ボルネオ島の初期の洞窟芸術」を取り上げます。

 

 

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