前回に引き続き、2018年度の43号目のネイチャーのハイライトより。
生物工学： トランスクリプトームの進化を監視する
Nature 562, 7727
2018年10月18日
細胞のトランスクリプトームは、内部や外部の合図に応答して絶えず変化している。トランスクリプトームの経時的進化に伴う変化を監視することができれば、こうした応答の理解に役立つと考えられる。R Plattたちは今回、CRISPRがファージ感染の記憶としてその塩基配列を獲得する系を利用することで、トランスクリプトーム変化の監視系を開発した。彼らはまず、DNAではなくRNA塩基配列を細菌ゲノムに取り込むことができるCRISPR–Cas系を突き止めた。獲得された配列を、増幅段階と塩基配列解読段階から構成されるプロトコル（Record–seq）を用いて読み出した。ゲノムのこれらの塩基配列を調べることで、1つの細胞事象の際に引き起こされる転写変化を再構築できる。
Article p.380
News & Views p.347
■CRISPR-Casシステムの構造と機能 - J-Stage（PDF)
この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。
日本語版の本誌では「生物工学：RNAを記録するCRISPRツール」と題され、見出しにおいては「細菌の防御系であるCRISPR–Casは、遭遇したウイルスのRNA配列に対応するDNA断片を保持できる。今回、そうした系の1つを利用して、細菌の経時的な遺伝子発現が記録された。」と取り上げられています。
フルテキストを直訳しますと・・・
CRISPRツールがRNAを記録に残す
となり、見出しを直訳しますと・・・
細菌防御システムCRISPR – Casは、遭遇したウイルスRNA配列に対応するDNA断片を保存することができます。そのようなシステムの１つは現在、細菌における遺伝子発現を経時的に記録するために利用されてきた。
となります。
フルテキストは下記です。
Full Text：News & Views p.347
CRISPR tool puts RNA on the record
本論文においては、日本語版の本誌では「生物工学：RNAから獲得したCRISPRスペーサーによる転写の記録」と取り上げられています。
フルテキストを直訳しますと・・・
RNAからのCRISPRスペーサー取得による転写記録
となり、Abstractを直訳しますと・・・
細胞内の転写事象を経時的に記録する能力は、分子事象がどのように複雑な細胞挙動および状態を引き起こすかを解明するのを助けるであろう。しかしながら、現在の分子記録技術は、少数の定義された刺激しか捕らえない。ここでは、CRISPRスペーサー取得を使用して、細胞内RNAを捕捉してDNAに変換し、転写情報のDNAベースの保存を可能にします。大腸菌では、RNAウイルスや任意の配列などの定義された刺激、および酸化ストレスなどの複雑な刺激によって、細胞集団内に保存される定量化可能な転写記録が得られることを示しています。我々は、転写記録が複雑な細胞の行動を分類して説明すること、そして異なる細胞の応答を組織化する正確な遺伝子を同定することを可能にすることを実証している。将来的には、CRISPRスペーサー取得を介したRNAの記録とそれに続くディープシーケンシング（Record – seq）を使用して、複雑な細胞の挙動や病理学的状態を表す転写履歴を再構築することができます。
となります。
フルテキストは下記です。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。
Full Text：Article p.380
Transcriptional recording by CRISPR spacer acquisition from RNA
尚、Data availabilityによると・・・
詳細な配列決定データは、国立バイオテクノロジー情報配列リードアーカイブ（PRJNA484149）で入手可能である。本研究中に生成および／または分析されたデータセットは、合理的な要求に応じて対応する著者から入手可能である。
だそうです。
究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「量子物理学： 宇宙空間での精密干渉法に向けて」を取り上げます。
