流れによる成長:脊椎動物の胚は組織がガラスのように「融解」して形成される | Just One of Those Things

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39号目のネイチャーのカバーストーリーより。

 

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Cover Story: 流れによる成長:脊椎動物の胚は組織がガラスのように「融解」して形成される
Nature 561, 7723
2018年9月20日     
 

 
表紙は、脊椎動物の胚の後方への体軸伸張を表したレンダリング画像で、組織の形態形成とガラス成形の間の類似性を浮き彫りにしている。今回O Campàsたちは、組織の機械的特性のin vivo測定、細胞動態の解析、理論モデルを組み合わせて、ゼブラフィッシュ胚の組織形態形成の背後にある物理的機構を明らかにしている。体の後端では細胞スケールの応力の変動が大きく(鮮やかなオレンジ色の部分)、これによって組織は「融解」して液体に似た状態になり、変形できるようになる。体の伸張が進むと、細胞スケールの応力変動は小さくなり(青色の領域)、組織が「凍結」して固体に似た状態になり、組織構造が確立する。この液体から固体への転移は、泡に似た組織構造における細胞ジャミングに起因する。

Letter p.401
News & Views p.315
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in vitroとin vivo|研究用語辞典|研究.net

ゼブラフィッシュ - Wikipedia

おまけ:「ゼブラフィッシュ」がもたらす医療の進歩 ガン治療法や組織再生の研究にも活用

ゼブラフィッシュ胚 - meddic

物理: 実際の粉粒体系におけるジャミング

上記はネイチャーの過去のハイライトのものですが、消える可能性があるので、最後に転載します。

ジャミングとは - コトバンク

 

この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

日本語版の本誌では「生物物理学:胚体は組織の「融解」で成形される」と題され、「今回、ゼブラフィッシュ胚の尾部の細胞集合体の振る舞いが、固体状態と液体状態の間で転移することが分かった。この転移が、胚の頭尾方向への伸張を可能にしている。」と見出しに取り上げられております。

 

フルテキストを直訳しますと・・・

 

組織の「融解」が胚を彫刻する

 

と題し、見出しを直訳しますと・・・

 

ゼブラフィッシュ胚の尾の中の細胞の集まりは、固体と液体のように振る舞うことの間で移行することが現在わかっています。この移行は、胚の頭から尾への伸長に関与しています。
 

フルテキストは下記です。

 

Full Text:News & Views p.315

Tissue ‘melting’ sculpts embryo

 

本論文においては、日本語版の本誌では「生物物理学:液体から固体へのジャミング転移が脊椎動物の体軸伸長の基盤となる」と題されています。

 

見出しを直訳しますと・・・

 

胚組織中の細胞集団は、フォーム、エマルジョンおよびコロイド懸濁液などの柔らかい材料中で起こるものと同様に、流体 - 固体ジャミング転移を受けて、脊椎動物の体軸を物理的に彫刻する。
 

となります。

 

フルテキストにおいては、

 

脊椎動物の体軸伸長の根底にある流体から固体へのジャミング遷移
 

と題し、Abstractを直訳しますと・・・

 

粘土成形またはガラス吹き込みのように、物理的に彫刻する生物学的構造は、固体のような全体的な機械的完全性を維持しながら、構成材料が流体のように局所的に流れることを必要とする。泡、エマルジョン、コロイド懸濁液などの無秩序な柔らかい材料は、詰まった遷移で流体様の挙動から固体様の挙動に切り替わります[1,2,3,4]。同様に、細胞集団は、2Dおよび3Dでガラス状のダイナミクスを示すことが示されており[5、6]、培養上皮単層でジャミングしています[7、8]、最近理論的に予測された挙動[9、10、11]、および喘息の病態生物学[8]および腫瘍の進行に影響を及ぼす[12]しかし、これらの一見普遍的な行動がin vivoで起こるかどうか[13]、そして特に、それらが胚の形態形成中に何らかの機能的役割を果たすかどうかについてはほとんどわかっていない。ここでは、細胞力学の分析と組織力学の直接in vivo測定を組み合わせることによって、我々は脊椎動物の体軸の伸長中に、後部組織が伸展端、中胚葉前駆体ゾーンで流体様の振る舞いからジャミング遷移を受けることを示す前虫中胚葉における固体様挙動湿潤から乾燥したフォーム様の構造へと移行する組織と一致して、プレソマイト系中胚葉への機械的完全性の向上をもたらす、降伏応力における前後方向のN-カドヘリン依存性勾配を明らかにした。我々の結果は、細胞規模のストレスが急速に変動し(約1分以内)、細胞の再配列を可能にし、成長端で組織を効果的に「融解」させることを示しています。細胞規模のストレスではなく、細胞上の規模での持続的な(0.5時間を超える)ストレスが、体液様組織領域における形態形成の流れを導く。一方向軸伸長は、成熟前のリモデリング中に後部の体液様組織を機械的に支持する、報告されているプレソミット中胚葉の硬化によって維持されている。流体様および固体様組織状態の時空間的制御は、胚形態形成の一般的な物理的メカニズムを表している可能性がある。
 

となります。

 

フルテキストは下記になります。詳細が必要な方はご購入をお願いいたします。

 

Full Text:Letter p.401

A fluid-to-solid jamming transition underlies vertebrate body axis elongation

 

直接関係ないですが、粉粒体系のジャミングのものを転載します。

 

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物理: 実際の粉粒体系におけるジャミング
Nature 480, 7377
2011年12月15日
 
ジャミングは、粉粒体や泡、ガラスやコロイドなどの系で充填密度が高まり臨界値を超えると、流体に似た状態から固体に似た状態、つまりジャミング状態に変わるという集団過程である。ジャミングの基本概念は直観的なもので、朝食用シリアルを器に入れることから、しっかりした盛り土を築くことまで、日常のさまざまな出来事に広くかかわっている。摩擦のない理想的な粉粒体におけるジャミング転移の性質は、よく解明されている。しかし、現実世界の粉粒体系には、本来的に摩擦がある。D Biたちは、摩擦がある粉粒体の集団では、理想的な系よりはるかに多様な現象が起こることを示している。最も注目に値するのは、臨界閾値未満の充填密度における、歪み誘起ジャミングの発生である。
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究極に溜まりに溜まったネイチャー。次回は、「がん: 脳を標的とするT細胞」を取り上げます。

 

 

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