細胞生物学: 機械的合図の変換 | Just One of Those Things

Just One of Those Things

Let's call the whole thing off

前回に引き続き、36号目のネイチャーのハイライトより。

 

----------------------------------------------------------
細胞生物学: 機械的合図の変換
Nature 560, 7720
2018年8月30日    

哺乳類の細胞では、細胞外マトリックス(ECM)からの機械的シグナルは細胞内へと伝達され、YAPとTAZという、Hippoシグナル伝達カスケードの一部として働く2つの転写コアクチベーターを調節する。しかし、この経路を構成する分子のいくつかは、まだ明らかになっていない。K Guanたちは今回、そのような空白のいくつかを埋め、この経路について最も完全な全体像を明らかにしている。低硬度のECMや細胞接触に応答して、酵素ホスホリパーゼCγ1(PLCγ1)がホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸(PIP2)とその産物であるホスファチジン酸(PA)という膜の2種類のリン脂質のレベルに影響を及ぼす。続いてこのリン脂質レベルが、タンパク質PDZGEF1およびPDZGEF2と、Ras関連GTPアーゼであるRAP2を調節する。その後、この活性型RAP2がMAP4K4、MAP4K6、MAP4K7、ARHGAP29といった酵素に結合してこれらを活性化し、その結果、酵素LATS1とLATS2の活性化や、YAPとTAZの阻害が起こり、ECM硬度応答性のトランスクリプトームが変化するのである。

Letter p.655
----------------------------------------------------------
 

細胞外マトリックス - 脳科学辞典

特集:細胞外マトリックス | コスモ・バイオ株式会社

Hippo-YAP シグナル伝達経路を介した細胞競合

おまけ:Hippoシグナル伝達系はがん細胞において宿主の腫瘍免疫を抑制する

ホスホリパーゼ - Wikipedia

「トランスクリプトーム」とは何? Weblio辞書

 

----------------------------------------------------------
細胞生物学:RAP2が仲介するHippo経路の機械刺激応答
Nature 560, 7720 |  Published: 2018年8月30日 |

哺乳類の細胞は隣接細胞や細胞外マトリックス(ECM)に周囲を囲まれており、これらが細胞に対する構造的支持や、さまざまな生物学的過程に影響を及ぼす機械的合図をもたらす。Hippo経路のエフェクターであるYAP(別名YAP1)とTAZ(別名WWTR1)は、機械的合図によって調節され、ECMの硬度に対する細胞応答を仲介する。今回我々は、Ras関連GTPアーゼRAP2が、ECMの硬度シグナルを伝達して、YAPとTAZを介して細胞の機械感受性活動を制御する、重要な細胞内シグナル伝達因子の1つであることを明らかにした。RAP2はECMの硬度が低いと活性化され、RAP2を欠失させると硬度シグナルによるYAPおよびTAZの調節が妨げられ、細胞の異常な成長が促進される。機構としては、マトリックスの硬度はホスホリパーゼCγ1(PLCγ1)を介して作用し、ホスファチジルイノシトール4,5-ビスリン酸とホスファチジン酸のレベルに影響し、これがPDZGEF1とPDZGEF2(別名RAPGEF2とRAPGEF6)を介してRAP2を活性化する。硬度が低いと、活性化したRAP2がMAP4K4、MAP4K6、MAP4K7、ARHGAP29に結合してこれらを刺激し、LATS1およびLATS2の活性化とYAPおよびTAZの阻害を引き起こす。YAPとTAZを欠失させると、ECMの硬度に応答するトランスクリプトームが消し去られることから、RAP2、YAP、TAZは機械刺激によって調節される転写に不可欠な役割を担っていることが分かる。これらの知見は、RAP2は機械刺激伝達の分子スイッチであり、ECMの硬度を核へと伝える機械シグナル伝達経路の1つとなっていることを示している。
----------------------------------------------------------
 
本当に実に機械的ですね。
 
究極に溜まりに溜まった恒例のネイチャー。次回は、構造生物学より、 Frizzled受容体の構造、を取り上げます。
 
 

ペタしてね