免疫学: 結核の潜在期から活動性疾患期への移行の理解 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

前回に引き続き、36号目のネイチャーのハイライトより。

 

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免疫学: 結核の潜在期から活動性疾患期への移行の理解
Nature 560, 7720
2018年8月30日    

今回Y Chienたちは、無症状の感染者、活動性結核の患者、非感染対照群を比較して、血液中の免疫細胞集団の感染ステージと相関する差異を明らかにするために、マスサイトメトリー解析といくつかのコホートからの遺伝子発現データセットを統合する体系的な研究を報告している。著者たちは、結核の潜在性の維持に、ナチュラルキラー細胞が関与している可能性を示唆している。

Letter p.644
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免疫学:結核菌感染の転帰に関連する免疫因子のマルチコホート研究
Nature 560, 7720 |  Published: 2018年8月30日 |

結核菌(Mycobacterium tuberculosis)感染のほとんどは、潜在性結核感染症として知られる臨床的に無症状で発病していない状態にあり、世界人口の約4分の1に影響している。活動性疾患へと最終的に移行するのは10人に1人以下であるが、結核は世界中の感染症による主な死因の1つである。懸命な取り組みが行われているにもかかわらず、感染の転帰に影響を与える免疫因子はあまりよく分かっていない。今回我々は、多数のコホートの統合解析法を用いて、結核菌感染に対するステージ特異的宿主応答を明らかにする。まず、南アフリカの青年コホートの高次元マスサイトメトリーおよび機能解析を用いて、我々は、潜在性結核が、CD16(別名FcγRIIIa)とナチュラルキラー細胞によって大部分が媒介される細胞傷害性応答の増強と、T細胞およびB細胞の両方の分画における免疫偏向を伴う持続した炎症と関連していることを示す。次に、年齢、遺伝的背景、地理的位置および感染ステージが異なるいくつかのコホート由来のトランスクリプトームデータの細胞タイプデコンボリューションを用いて、末梢のB細胞分画とT細胞分画における偏向は、一般的に潜在期に始まるが、それらはコホート間で不均一であることを明らかにする。しかし、血中ナチュラルキラー細胞数が、結核潜在期に増加し、活動性疾患期には減少して、臨床的治癒時にベースライン値に戻ることは、全てのコホートに共通の特徴である。さらに、3つの長期的なコホートの解析によって、ナチュラルキラー細胞の末梢レベルの変化から、疾患の進行と治療応答についての情報を知ることができ、この変化が活動性結核患者の肺の炎症状態と逆相関することが見いだされた。まとめると我々の知見は、結核の潜在性の基礎となる病態生理学に関する非常に重要な手掛かりを与え、また感染の転帰に影響し得る因子を明らかにしている。
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CD16 - Wikipedia(英文)
CD16は、免疫グロブリンのFc部分に対するリセプター(FcγRIII:Fcγ受容体タイプIII ) です。
 
日本語版Wikipediaは全滅でした。なので取り上げていません。
 
究極に溜まりに溜まった恒例のネイチャー。なので、挙げるペースをできる限り挙げています。次回は、細胞生物学より、 機械的合図の変換、を取り上げます。
 
 
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