構造生物学: Orcoのクライオ電子顕微鏡構造は昆虫嗅覚の基盤についての手掛かりをもたらす | Just One of Those Things

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前回に引き続き、35号目のネイチャーのハイライトより。

 

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構造生物学: Orcoのクライオ電子顕微鏡構造は昆虫嗅覚の基盤についての手掛かりをもたらす
Nature 560, 7719
2018年8月23日    

昆虫の嗅覚は、イオンチャネルを介したシグナル伝達を基盤にしていると考えられている。このイオンチャネルは、共通して見られる共受容体Orcoを1つと、多様な嗅受容体のうちの1つから形成され、におい物質受容体がにおいの特異性を知らせる。Orcoは嗅覚ニューロンに広く発現し、昆虫間で広範にわたって保存されている。しかし、OrcoがORサブユニットと共に機能を備えたチャネルの一部を形成する仕組みは、よく分かっていない。今回V Rutaたちは、Orcoのクライオ(極低温)電子顕微鏡構造を示し、それが風車に似た形の四量体陽イオンチャネルを形成していることを明らかにしている。Orcoは7本の膜貫通セグメントから形成され、各サブユニットが集まって小孔が形成されている。イオンは中央の小孔を通って移動し、4つの側方導管から細胞質ゾルへ出て行くと考えられる。この研究は、昆虫の嗅覚の基盤に関する手掛かりを与えるものだが、さまざまな種類の昆虫が揮発性の化学シグナルを選択的に検出する仕組みについての答えを握っているのはORサブユニットの多様性のようだ。

Letter p.387
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神経細胞 - Wikipedia(ニューロン)
細胞質基質 - Wikipedia(細胞質ゾル)
 
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構造生物学:昆虫嗅覚受容体Orcoのクライオ電子顕微鏡構造
Nature 560, 7719 |  Published: 2018年8月23日 |

嗅覚系は、環境中の非常に多様な化学物質を識別しなくてはならない。そのような多様性に対処するために、昆虫はにおい物質によってゲート開閉するイオンチャネルのファミリーを進化させてきた。このイオンチャネルは、1個の非常によく保存された共受容体(Orco)と、多様なにおい物質受容体(OR、化学的特異性を知らせる)のうちの1つから構成される。今回我々は、イチジク寄生バチの一種であるApocrypta bakeri由来のOrcoホモマーについて、単粒子クライオ(極低温)電子顕微鏡法による3.5 Å分解能での構造を示し、この受容体ファミリーに関する構造学的な知見を提供する。Orcoは新規なチャネル構造を持ち、4つのサブユニットが中央の小孔の周囲に対称的に配置されていて、小孔は細胞質ゾルに向かって開く4つの側方導管に分岐している。Orco四量体は、膜内ではサブユニット間相互作用がほとんどなく、細胞質側にある小さな係留ドメインによってまとめられている。OR間で保存されている最小配列は、大部分が小孔と係留ドメインに位置付けられる。このことは、この受容体ファミリーの構造が、どのようにしてその著しい配列多様性を受け入れ、におい物質へのチューニングの進化を促進してきたかを解明する手掛かりとなる。
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とんでもなく、溜まりに溜まった恒例のネイチャー。次回は、量子物理学より、プログラム可能な磁気格子としての量子プロセッサー、を取り上げます。
 

※現在まわっております。いよいよクリスマスイブですね。良い夜を・・・。
 

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