ゲノミクス: 肺塩類細胞は嚢胞性繊維症遺伝子を発現している | Just One of Those Things

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34号目のネイチャーのハイライトより。

 

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ゲノミクス: 肺塩類細胞は嚢胞性繊維症遺伝子を発現している
Nature 560, 7718
2018年8月16日    

J Rajagopalたちは今回、マウスにおいて気管上皮の単一細胞RNA塩基配列解読とin vivoの細胞系譜追跡を行い、肺上皮細胞の階層性、分布、出現時期を明確に示している。彼らはまた、嚢胞性繊維症で変異の見られる遺伝子CFTR(マウスではCftr)が、ヒトでもマウスでも、肺塩類細胞(pulmonary ionocyte)と呼ばれる少数の細胞集団で主に発現することを明らかにした。塩類細胞の指定に必要なこの転写因子が失われたマウスでは、CFTRの欠失に伴うヒトの表現型が再現された。

Article p.319
News & Views p.313
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上記はハイライトに上がらなかった論文です。わかりやすくするために、論文の最後に取り上げます。
上記のネイチャーの姉妹誌のものも、論文の最後に取り上げます。

膵嚢胞線維症(嚢胞性線維症)の治療指針の作成(PDF)

JP2006213728A - 膵嚢胞性線維症(cf)および慢性閉塞性肺疾患(copd)の治療におけるカモスタットの使用

CFTR - meddic

CFTR遺伝子解析 - 名古屋大学 総合保健体育科学センター

アジア型変異CFTRの発現と機能の解析(PDF)

in vitroとin vivo|研究用語辞典|研究.net

 

ゲノミクスより、未知の気道細胞のプロファイリングがなされました。


今回、哺乳類の気管の単一細胞RNA塩基配列解読によって、体液平衡と溶質平衡に関わる遺伝子を発現していて嚢胞性線維症に関与している可能性のある、これまで知られていなかった気道細胞が明らかになりました。

 

この論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

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ゲノミクス:CFTRを発現する塩類細胞を含めた気道上皮階層性の見直し
Nature 560, 7718 |  Published: 2018年8月16日 |

肺の気道は、喘息と嚢胞性繊維症の原発部位である。今回我々は、単一細胞RNA塩基配列解読(scRNA-seq)とin vivoでの細胞系譜追跡を行い、マウス気管上皮の細胞構成と階層性を調べた。その結果、Foxi1+肺塩類細胞(pulmonary ionocyte)というまれな細胞タイプ、クラブ細胞の位置に基づく機能的変異体、今回「hillock」と名付けた代謝回転率の高い扁平上皮構造中の独特な細胞タイプ、疾患に関係する刷子(タフト)細胞と杯細胞のサブセットが特定された。我々はscRNA-seq法と細胞系譜の追跡を組み合わせた「pulse-seq」法を開発し、刷子細胞や神経内分泌細胞、塩類細胞が、基底の前駆細胞から継続的に直接補充されることを明らかにした。マウスでもヒトでも、塩類細胞が嚢胞性繊維症膜コンダクタンス調節因子(マウスではCftr、ヒトではCFTR)の転写産物の主な供給源となっていた。マウスの塩類細胞でFoxi1をノックアウトするとCftrの発現が喪失し、気道液と気道粘液の生理機能が損なわれた。これらは嚢胞性繊維症に特徴的な表現型である。細胞タイプ特異的な発現プログラムと主要な疾患遺伝子が関連付けられたことで、気道疾患について細胞レベルでの新たな説明が可能になった。
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視床下部ホルモン - サイトナビ[stnv.net](神経内分泌細胞)

塩類細胞の分子解剖と分化誘導機構

塩類細胞は水生生物のものしかないです・・・。

 

以下より、先にリンクで挙げたネイチャーの参考文献を転載します。

 

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ゲノミクス:気道上皮の単一細胞アトラスからCFTRが豊富な肺塩類細胞が明らかになった
Nature 560, 7718 |  Published: 2018年8月16日 |

上皮組織の機能は、上皮に含まれる分化した細胞のタイプ、数、分布によって決定される。損傷後に組織機能を回復させるためには、複数の細胞タイプの間で生理的役割がどのように分配されているのか、また、恒常性、損傷–修復、疾患の間で細胞の状態がどのように変化するのかについて知る必要がある。誘導気道では、不均一な基底細胞集団から、粘膜繊毛クリアランスを行う特殊化した管腔細胞が生じる。今回我々は、ヒト気管支上皮細胞とマウス気管上皮細胞の単一細胞プロフファイリングを行い、誘導気道の細胞タイプと、それらの恒常性や再生における挙動について包括的な調査を行った。解析の結果、既知の細胞集団や新規の細胞集団を表す細胞状態が明らかになり、それらの不均一性が示され、また、恒常性状態の分化軌跡と組織修復の際の分化軌跡が異なることが突き止められた。さらに我々は、FOXI1、液胞型H+-ATPアーゼ(V型ATPアーゼ)の複数のサブユニット、嚢胞性繊維症で変異が見られる遺伝子CFTRを共発現する新規のまれな細胞タイプを見いだし、この細胞を「肺塩類細胞(pulmonary ionocyte)」と名付けた。免疫蛍光法、シグナル伝達経路の調節、電気生理学を用い、我々は、この肺塩類細胞の産生を引き起こすには、Notchシグナル伝達が必要で、FOXI1発現が十分であること、また、肺塩類細胞は誘導気道上皮におけるCFTR活性の主な供給源であることを明らかにした。
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続いて、ネイチャーの姉妹誌より。
 
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嚢胞性繊維症:構造情報を指針とする併用療法は変異型CFTRの機能を強力に改善する
Nature Medicine 24, 11 |  Published: 2018年10月8日 |

細胞膜アニオンチャネルのCFTR(cystic fibrosis transmembrane conductance regulator)の最もよく見られる病原性変異であるCFTR-ΔF508(別名CFTR-F508del)は、タンパク質の折りたたみ異常を引き起こす。タンパク質構造を修正するための現在利用可能な薬剤では、効率の良い修復ができないため、嚢胞性繊維症(CF)の臨床表現型を十分に軽減できない。今回我々は、この修正効率の上限を乗り越える目的で研究を行い、CFTR中の異なる構造異常を標的とする複数の化合物が相乗的に働いて、細胞膜での変異型の発現と機能を救済できることを明らかにした。細胞を用いたハイスループットスクリーニングと機構解析から、3種類の小分子群が見つかった。これらはそれぞれ、ヌクレオチド結合ドメイン1(nucleotide-binding domain 1;NBD1)、NBD2、およびそれらと膜貫通ドメイン(membrane-spanning domain;MSD)との境界に位置する異常を標的とする。これらの化合物は、単独ではΔF508-CFTRの折りたたみ効率や機能、安定性をわずかに改善するだけだが、組み合わせて使用すると、不死化ヒト気道上皮や初代培養ヒト気道上皮、マウス鼻上皮で野生型レベルの50~100%に至る構造修正が引き起こされる。構造修正剤の併用は、さまざまなCFTRドメインに生じるまれなミスセンス変異に対しても同様に効果的であって、これらは構造的アロステリーを介して作用している可能性があり、幅広い適用に対する機構的枠組みが考えられる。
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以上。

 

溜まりに溜まった恒例のネイチャー。次回は、ゲノム編集より、 酵母細胞では染色体の数を減らしてもその適応度にはほとんど影響がない、を取り上げます。

 

 

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