変わりゆくクローン:遺伝進化ががん細胞株の薬剤応答を変える仕組み | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

34号目のネイチャーのカバーストーリーより。
 

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Cover Story: 変わりゆくクローン:遺伝進化ががん細胞株の薬剤応答を変える仕組み
Nature 560, 7718
2018年8月16日    

表紙は、斜面を転がり落ちる多数のビー玉である。これらのビー玉は細胞株を表現しており、一見すると全てよく似ているが、詳しく見ると、斜面の下の方にあるものほど、ビー玉の内部パターンが変化していることが分かる。これは、T Golubたちが今回見いだした結果を反映している。彼らは、がん細胞株を調べ、これらの細胞株「系統」は、クローン性とは程遠く、ゲノム変化、遺伝子発現プロファイル、増殖速度、薬剤応答性に違いが見られ、その全てが遺伝的および転写的な進化の結果生じていることを示している。今回の知見は、そうした細胞株を用いるがん研究に影響を及ぼす。また、著者たちは、細胞株の分岐の評価に役立つCell STRAINER(https://cellstrainer.broadinstitute.org)というオンラインツールを作り、公開している。

Article p.325
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今後は、臨床的評価ではなく、科学的に評価できるようになりそうですね。

 

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がん:遺伝と転写の進化が、がん細胞株の薬剤抵抗性を変化させる
Nature 560, 7718 |  Published: 2018年8月16日 |

ヒトがん細胞株は、がん研究に欠かせない主要なツールである。細胞株は、培養中に進化することが知られているが、その結果として生じる遺伝的および転写的な不均一性の程度や、その機能的影響については十分研究がなされていない。今回我々は、2つの研究室で培養された106のヒト細胞株のゲノム解析の結果を用いて、大規模なクローン多様性を明らかにする。一般的な乳がん細胞株MCF7の27系統について、さらに包括的なゲノム特性評価を行ったところ、急速な遺伝的多様化が明らかになった。追加の13細胞株の複数の系統でも同様の結果が得られた。特に、遺伝的変化は遺伝子発現プログラムの活性化における違いや、細胞の形態や増殖の著しい差異に関連していた。バーコーディング実験では、細胞株の進化は、培養条件に高い感受性を示す正のクローン選択の結果として起こることが明らかになった。単一細胞に由来するクローンの解析からは、継続的な不安定性が、即座に細胞株の不均一性へと変換されることが示された。27系統のMCF7で321種類の抗がん化合物を試したところ、薬剤応答性にかなりの違いがあること、すなわち、一部の系統を強く抑制する化合物のうち少なくとも75%は、他の系統では全く活性を示さないことが分かった。この研究は、細胞株内の遺伝的変動の程度、起源および影響について実証し、がん研究の再現性を最大限にするための取り組みにおいて、このような変動を計測するための枠組みを研究者に提供する。
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お見事!お手柄です。
 
溜まりに溜まった恒例のネイチャー。次回は、ゲノミクスより、 肺塩類細胞は嚢胞性繊維症遺伝子を発現している、を取り上げます。
 

 

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