免疫学: NLRP3インフラマソームの活性化はミトコンドリアDNA合成に依存する | Just One of Those Things

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前回に引き続き、33号目のネイチャーのハイライトより。

 

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免疫学: NLRP3インフラマソームの活性化はミトコンドリアDNA合成に依存する 
Nature 560, 7717
2018年8月9日    

 

 

リポ多糖(LPS)によるToll様受容体4(TLR4)の刺激によって、NLRP3インフラマソーム活性化がプライミングされる。今回、これがヌクレオチドキナーゼであるCMPK2の誘導を刺激し、ミトコンドリアDNAのde novo合成につながることが示された。細胞がNLRP3活性化因子に曝露されると、新たに合成されたミトコンドリアDNAの遊離と酸化が引き起こされ、その後、このDNAがNLRP3に結合してインフラマソームの集合や活性化を誘導することが分かった。
 

Article p.198
News & Views p.176
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より、
【NLRP3の活性化異常が自己炎症症候群、肥満、2型糖尿病につながることが報告されている。】
ということで、対象の方や日ごろ気になっている方は要注意です。
上記はネイチャーの姉妹誌です。念のため最後に転載しておきます。

インフラマソームのSUMO化 | Science Signaling Japan(NLRP3インフラマソーム)

ミトコンドリアDNA - Wikipedia

ミトコンドリアDNAとは

(上記は優しく説明されたものです)

ミトコンドリア DNA: 遺伝子の種類、複製機構、病気との関係など

ミトコンドリア

(上記もわかりやすく説明されています)

ミトコンドリアとは|構造や機能をわかりやすく解説

(これなら全体的に把握できるかもしれません・・・)

リポ多糖 - Wikipedia

<用語解説> - ホーム|国立研究開発法人 科学技術振興機構報 第403号

より

【(注1) リポ多糖
 LipopolysaccharideからLPSと略記されます。一般には共有結合で結ばれた脂質と多糖の複合体で(右図)、とくに、主としてグラム陰性細菌の外膜成分として存在する、エンドトキシンの本体です。腸内細菌科の細菌のLPSについて古くから研究されてきました。LPSの基本構造には、菌種間で共通性がみられますが、分類学的に遠縁の菌では大きな違いがあります。LPSは様々な生物活性を示し、病原細菌のLPSは、宿主の免疫系により感染のシグナルとして認識されます。
 歯周ポケットから分離されるグラム陰性細菌は、歯周病発症と密接に関連していると考えられています。歯周病細菌のLPSは歯槽骨を破壊する破骨細胞の分化を促進するとの報告があり、MD-2とTLR4の歯周病への寄与も研究されています。LPSを除去する成分を含む歯磨きペーストも市販されています。】

(メカニズムの図は上記ページをご参照のこと)
Toll様受容体 - Wikipedia

TLR4 - Wikipedia

ヌクレオチドとヌクレオシドについて ...- Yahoo!知恵袋

(ヌクレオチドキナーゼの参考文献がないので)

ヌクレオチド - Wikipedia

 

ヌクレオチドキナーゼであるCMPK2は、英文による論文だらけでまだまとめ上げられていません。

 

デノボ合成(デノボごうせい)とは - デノボ合成の読み方(de novo合成)

ヌクレオチド合成 - 学科概要 | 化学科 | 福岡大学 理学部(de novo合成)

 

免疫学より、ミトコンドリアDNAの合成は炎症を生じさせることがわかりました。
 
免疫細胞のインフラマソームタンパク質複合体の活性化は、自然免疫応答の引き金になる重要な段階であります。今回、ミトコンドリアDNAの合成と酸化が、この活性化段階を駆動することが分かりました。
 
この論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。
 
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免疫学:新たなミトコンドリアDNAの合成がNLRP3インフラマソームの活性化を可能にする
Nature 560, 7717 |  Published: 2018年8月9日 |

NLRP3インフラマソーム活性の調節異常は、無制御な炎症を引き起こし、このような炎症は多くの慢性疾患の根底にある。NLRP3インフラマソームの集合や活性化にはミトコンドリアの損傷が必要だが、構造的に多様なインフラマソーム活性化刺激に対して、マクロファージが応答できる仕組みについては明らかにされていない。本論文では、Toll様受容体の結合後に誘導されるミトコンドリアDNA(mtDNA)の合成が、NLRP3シグナル伝達に必須であることを示す。Toll様受容体はMyD88やTRIFアダプターを介してシグナルを伝達し、mtDNA合成のためのデオキシリボヌクレオチドを供給する律速酵素であるCMPK2の転写を、IRF1依存的に引き起こす。CMPK2依存的なmtDNA合成は、NLRP3活性化因子に曝露された後の酸化されたmtDNA断片の産生に必要となる。細胞質の酸化mtDNAは、NLRP3インフラマソーム複合体と会合し、その活性化に必要である。このCMPK2の触媒活性への依存性は、NLRP3インフラマソーム関連疾患をより有効に制御する治療機会をもたらす。
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マクロファージとは - 生物学用語 Weblio辞書

マクロファージの働きは? - Next Pharmacist.net | 学びを楽しもう。世界を幸せにする薬学を。

マクロファージの詳細が載せてある物は、医学関係者のものしか観覧できないので・・・。

デオキシリボヌクレオチド - Wikipedia

デオキシリボヌクレオチド - デオキシリボヌクレオチド概要

 

では、参考文献に挙げたネイチャーの姉妹誌の転載を下記にします。

 

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新しい抗炎症物質が見つかった
Nature Medicine
2015年2月17日

New anti-inflammatory compounds identified
 
NLRP3は免疫系タンパク質の1つで、インフラマソームと呼ばれるタンパク質複合体の構成成分である。インフラマソームは自己免疫疾患、2型糖尿病、アルツハイマー病、アテローム性動脈硬化症、自己炎症性疾患などの複数の病気に関わり、炎症応答を促進する。今回、2つの研究グループがNLRP3の働きを阻害する化合物を見つけて、それぞれ報告している。
 
V D Dixitたちは、絶食、激しい運動、カロリー制限や低炭水化物ケト原性食の摂取に応答して体内で生産される代謝産物であるβ-ヒドロキシ酪酸(BHB)にNLRP3を直接阻害する作用があることを明らかにした。in vivoでの生物学的利用能を高めるためにBHBをナノ粒子に封入してから炎症性疾患のマウスモデルに投与すると、血液中のBHBレベルを上昇させるケト原性食を摂取した場合と同じように炎症の症状が軽減した。これらの知見から、絶食、ケト原性食の摂取や激しい運動の際に見られる抗炎症効果の一部は、BHB産生とそれによるNLRP3の阻害を介していると考えられる。
 
もう1つの研究でL O'NeillとM Cooperたちは、MCC950という薬剤がNLRP3を直接阻害することを報告している。MCC950は、ヒト細胞、あるいは自己免疫疾患や自己炎症性疾患のマウスモデルで、炎症応答の抑制に効果があった。このことは、MCC950がさまざまな炎症性疾患の治療に使える可能性を示している。また、MCC950の抗炎症作用は、インフラマソーム複合体中の感染制御に重要な働きをする成分には影響を与えないことも明らかになった。
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以上。

 

溜まりに溜まった恒例のネイチャー。次回は、材料科学より、 グラフェンナノリボンを用いたトポロジー制御 、を取り上げます。それまで制御できなかったものが制御できるようになったという、この論文の成果は、凄い進展です。
 

※多忙につき、相変わらずブログでの対応が遅れていますことを、心からお詫び申し上げます。
 

 

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