DNA損傷: 複製フォークの速度がゲノム不安定性を引き起こす | Just One of Those Things

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昨日に引き続き、29号目のネイチャーのハイライトより。

 

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DNA損傷: 複製フォークの速度がゲノム不安定性を引き起こす
Nature 559, 7713
2018年7月12日 

DNAの完全性は細胞の健康に非常に重要であるため、DNA損傷の修復には多くの経路が関与している。2005年以後、DNA修復因子を標的とする薬剤は、特に別のDNA修復経路にすでに異常がある細胞において、治療に有望であるというパラダイムが出現している。PARP阻害剤はDNA複製を停止させることで、ゲノム不安定性を引き起こすと考えられてきた。今回J Bartekたちは、PARP阻害が実際には複製フォークの進行速度を上げてDNA損傷を誘導し、この損傷は細胞に認識されないことを明らかにしている。これらの結果は、PARPの阻害が治療の効果を高めることができる機構についての新しい視点を示している。

Letter p.279
News & Views p.186
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DNA修復 - Wikipedia(DNA損傷)

DNAの複製の機構(複製フォークの形成、複製フォークにおけるDNA複製の方法、RNAプライマー、リーディング鎖とラギング鎖、岡崎フラグメント、DNAポリメラーゼ、DNAリガーゼの語を含む)について

SLFN11はDNA複製にストレスがかかったとき複製フォークの進行を阻害する

【速報】2015年ノーベル化学賞は「DNA修復機構の解明」に!

 

(おまけ1:がん細胞のDNA修復能力を規定する新しい因子の発見(PDF)

おまけ2:遺伝子検査;遺伝性腫瘍総論:DNA修復機構②危険なDNA二本鎖損傷

 

【前立腺がん】 PARP阻害薬オラパリブ(リムパーザ)、DNA修復遺伝子に異常がある患者に効果がある可能性

卵巣がんのPARP阻害薬(オラパリブ、ルカパリブ、ニラパリブなど)、より多くの患者が有効性を享受するための治療戦略

PARP阻害薬オラパリブ(リムパーザ) 遺伝性乳がん卵巣がんへの効果が期待~アストラゼネカ記者会見より③~

PARP の機能と抗がん剤としての PARP 阻害剤の作用機序(PDF)

PARP阻害剤の新しい作用機序を発見(NCIプレスリリース)

 

(おまけ3:抗がん治療薬、シスプラチンが、がん細胞に効かなくなる分子機構の究明―京都大学

おまけ4:シスプラチン - Wikipedia

おまけ:シスプラチンの特徴と副作用

 

アストラゼネカのPARP阻害剤「オラパリブ」、BRCA遺伝子変異陽性の卵巣癌におけるファースト・イン・クラスの治療薬として、希少疾病用医薬品に指定(認定されてる医薬品)

アストラゼネカのPARP阻害剤「オラパリブ」、BRCA遺伝子変異陽性乳癌におけるファースト・イン・クラスの治療薬として、希少疾病用医薬品に指定(認定されている医薬品)

PARP阻害剤シリーズ|試薬ホームページ|富士フイルム(がんのアポトーシス研究のための試薬)

 

DNA損傷の研究より、複製の速度限界を破ることができるのがわかりました。いわゆる、がん研究の一環のものです。

 

PARPタンパク質の阻害剤は、がん治療に使われています。今回、PARP阻害剤は、DNA損傷が生じる速度までDNA複製を加速することによって効能を発揮していることが分かりました。
 

この論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

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DNA損傷:高速でのフォーク進行がDNA複製ストレスとゲノム不安定性を誘導する
Nature 559, 7713 |  Published: 2018年7月12日 | 

ゲノムの完全性を保証するために、DNAの正確な複製は厳密に調節される必要がある。ヒト細胞では、数千の複製起点がS期に協調的に活性化され、複製フォークの速度は細胞周期に合わせてDNAを完全に複製するように調整される。複製ストレスはフォーク停止を引き起こして、ゲノム不安定性を誘導する。複製ストレスは、がんの促進における新たな役割が分かってきたものの、その機構的基盤についてはほとんど解明されていない。今回我々は、ポリADPリボースポリメラーゼ(PARP)の阻害は、フォークの伸長速度を上昇させ、フォークの停止を引き起こさないことを示す。これはPARPの阻害剤がフォークの停止と崩壊を誘導するという、これまでに受け入れられてきたモデルとは対照的である。フォークの進行が、正常速度の40%を超えて異常に加速するとDNA損傷につながった。複製起点の発火に関与するtreslinタンパク質あるいはMTBPタンパク質を除去した場合も、許容閾値を超えるフォーク速度の上昇が起こり、DNA損傷応答経路が誘導された。機構的には、ポリADPリボシル化とPCNAの相互作用因子p21Cip1(p21)がフォーク進行の重要な調節因子であることが分かった。ポリADPリボシル化とp21は、PARP1タンパク質とp53タンパク質によって調整される協調的な調節ネットワークにおけるフォーク速度の抑制因子として機能する。その上、フォークレベルでは、ポリADPリボシル化は複製ストレスのセンサーとして機能する。DNA損傷部位はフォーク停止を誘導して、通常は分解や修復が行われるが、PARPが阻害されていると、DNA損傷部位は複製装置に認識されなくなる。概念的には、我々の結果から、複製フォーク進行の加速は、複製ストレスやDNA損傷応答を開始させる一般的な機構であることが示された。今回の知見は、フォーク速度を制御する機構についての理解を深めるとともに、ゲノム(不)安定性や合理的ながん治療についての示唆も含んでいる。
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朗報ですね。参考資料は上記で十分かと思われます。まぁ、粛々と着々とですねぇ・・・。がん治療が発展することを心から祈ります。

 

溜まりに溜まったネーチャー、次回は30号目となります。Cover Storyより 解析して判断する研究から、「分子の手書き文字」をパターン認識するDNAベースのニューラルネットワーク、を取り上げます。
 

 

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