古気候学: 淡水から見た氷期の海洋循環 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

前回に引き続き、29号目のネイチャーのハイライトより。
 

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古気候学: 淡水から見た氷期の海洋循環
Nature 559, 7713
2018年7月12日 

淡水の急速な放出によって、海洋循環とより広範な気候パターンが乱される可能性がある。そうした事象は、ハインリッヒ亜氷期と呼ばれる北大西洋の著しい寒冷期などにおいて、大西洋に影響を及ぼした可能性がある。今回E Maierたちは、北大西洋が、コルディレラ氷床から北太平洋への淡水の放出のきっかけとなった可能性もあることを示している。海洋間結合(北大西洋の循環の弱化から始まる)には、赤道太平洋東部が異常に温暖で、北半球高緯度域が極端に寒冷でないことが必要である。気候のテレコネクションに矛盾が見られると思われる場合、ランダムに生じたものとして退けるのは簡単である。しかし今回の研究では、ある機構の出現が気候システムの全体的な状態にどのように依存しているか、そしてそれは、時にはテレコネクションを促進し、時には抑制する可能性があることの一例が示されている。

Letter p.241
News & Views p.185
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まずは、基礎と行きましょうか。
今回のハイライトの分に入ります。

Heinrich Stadial 1(ハインリッヒ亜氷期1)における南太平洋熱帯表層水温の数年スケール変動―日本地球化学会

過去の二酸化炭素濃度の急上昇は海洋循環の強まりに付随して起こった(ハインリッヒ亜氷期)

古気候学 - Wikipedia

(これまでの流れとしてご参考に:「1_93 ハインリッヒ・イベント:IRD 4(2010.08.05)」/「ハインリッヒイベント時の大気中CO2上昇の謎〜アイスコアからのアプローチ(2012年10月1日月曜日)」/「雑誌会発表内容 - 秋田大学情報統括センター(2016年07月25日(月))」)

北太平洋に比べ北大西洋に大きい氷山が多いのはなぜ?

(コルディレラ氷床についてのこれまでの流れとしてご参考に:「気候文明史・世界を変えた8万年の攻防 田家康 日本経新聞(2011/2/28 月曜日))」/「大陸氷河の分布についてです。(地理) 氷期の北半球大陸氷河の分布を見てみると(2016/11/29)」

大気海洋結合モデル - 気象庁

MIROC大気海洋結合モデルによるhindcast実験(PDF)

大型大気レーダー国際共同観測による南北半球間結合の研究

テレコネクション - Wikipedia

(注:現在、脚注によって参照されていないので、情報源が不明瞭となっておりますが・・・)

 

古気候学より、北大平洋への淡水放出についての論文です。


最終氷期を中断させた気候異常の特徴は、北大西洋へ淡水を放出した氷山の流出でした。今回、北太平洋にも淡水が時々放出されていたことが分かりました。

 

この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

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古気候学:氷期の海洋循環の変化と関連した北太平洋の淡水事象
Nature 559, 7713 |  Published: 2018年7月12日 |

大量の淡水の海洋への一時的な流出が、氷期の全球海洋循環と気候変動に大きな影響を及ぼしたことを示す有力な証拠が存在する。北大西洋域において、北大西洋への大量の淡水の流出事象はハインリッヒ亜氷期と呼ばれる特徴的な寒冷期と関連していた。これに対し、北太平洋域における淡水の履歴はまだよく分かっておらず、結果として、ハインリッヒ亜氷期における北太平洋と北大西洋の気候の関連性の存在とその考えられる規模に関する議論が続いている。今回我々は、ハインリッヒ亜氷期における北大西洋循環の変化と北米のコルディレラ氷床から北太平洋北東部への淡水の流入の間に強い関連性があることを見いだした。過去5万年にわたる珪藻のδ18O(酸素の安定同位体18Oと16Oの比率の尺度)の記録から、表層海水のδ18Oが1000分の2~1000分の3減少したことが示され、これは約2~4実用塩分単位の塩分減少に相当する。この事象は、ハインリッヒ亜氷期1と4における北太平洋北東部での漂流岩屑の堆積の増大や海面のわずかな寒冷化と同時に生じていたが、ハインリッヒ亜氷期3では生じていなかった。さらに、同位体を組み込んだモデルの結果からは、ハインリッヒ亜氷期における赤道太平洋東部の温暖化が北大西洋のシグナルを北太平洋北東部へ伝達するのに重要であり、北太平洋北東部では、ハインリッヒ亜氷期1と4において付随する亜表層水の温暖化によって、コルディレラ氷床から識別できるほどの淡水の流出が生じたことが示唆された。一方、過去5万年間で最も寒冷な期間であるハインリッヒ亜氷期3では、北半球高緯度域の著しい寒冷化が背景となって、北太平洋北東部の亜表層水の温暖化が妨げられ、それによってコルディレラ氷床からの淡水の流出が増加した。組み合わせると今回の結果は、氷期における北大西洋と北太平洋の淡水流出の応答を結び付けるダイナミクスに、非線形的な海洋と大気の背景相互作用が複雑な役割を果たしていたことを示している。
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ハイライトで参考資料を取り上げたもので十分でしょう。非線形流体力学などが出てきてかなり年月が経ちますが、かなり鮮明になってきましたね。
 
溜まりに溜まった恒例のネイチャー、実は、溜まりすぎて焦っておりますが・・・。次回は、進化論より、公共財ゲームで協力を最大にするには、を取り上げます。
 
今日はまわりきることができますでしょうか・・・?
 

 

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