がん治療: 急性骨髄性白血病で獲得抵抗性が生じる機構 | Just One of Those Things

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昨日に引き続き、27号目のネイチャーのハイライトより。

 

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がん治療: 急性骨髄性白血病で獲得抵抗性が生じる機構
Nature 559, 7712
2018年7月5日

IDH1酵素とIDH2酵素の変異は、がん代謝物である2-ヒドロキシグルタル酸の産生につながり、近年では臨床においてIDH阻害剤による治療標的とされてきた。今回R Levineたちは、ヘテロ接合性IDH2変異に起因する急性骨髄性白血病患者2人で生じた抵抗性の新たな機構について報告している。両患者とも、野生型のIDH2対立遺伝子に第二の変異がトランスに生じており、この変異によってIDH2阻害剤に対する治療抵抗性が誘導され、2-ヒドロキシグルタル酸レベルの維持が可能になっていた。この機構はシス変異でも起こる可能性があり、以前に報告されたチロシンキナーゼ阻害剤に対する抵抗性機構と類似した、IDH阻害に対する獲得抵抗性の最初の証拠である。

Letter p.125
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(IDH1酵素とIDH2酵素)

Science IDH2 IDH1 - EurekAlert! Science News(PDF)(IDH1酵素とIDH2酵素)

12月27日:IDH突然変異とガンの悪性度(Natureオンライン版掲載論文)

 

昔のネイチャーですが、論文は削除されていて、ハイライトだけかろうじて残っていました。記事がなくなる前に下記に取り上げます。

 

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医学: イソクエン酸脱水素酵素の変異によるがんの誘発
Nature 483, 7390
2012年3月22日

イソクエン酸脱水素酵素をコードする遺伝子IDH1およびIDH2の変異は、広く見られるタイプの脳腫瘍である神経膠腫や、白血病などの他のがんで見つかっている。変異の生じた酵素は2–ヒドロキシグルタル酸(2HG)を産生し、この2HGは発がん代謝物となる可能性がある。今週号では、3報の論文でIDH変異ががんを助長する機序が調べられている。Luたちは、2HGを産生するIDH変異体は、前駆細胞の分化に必要とされるヒストン脱メチルを阻害し、これが腫瘍細胞が集積する一因となっている可能性を示している。一方、Turcanたちはヒトのアストロサイト初代培養細胞でのIDH1変異が、DNAの過剰なメチル化を引き起こしてメチロームを作り変え、神経膠腫などの固形腫瘍に広く見られるCIMP表現型に類似した状態を誘発することを示した。Koivunenたちは、2HGの(R)–エナンチオマー(鏡像異性体)がEGLNプロリル4–ヒドロキシラーゼの活性を刺激して、これが低酸素誘導因子(HIF)量の低下につながり、その結果細胞増殖が促進されることがあるが、(S)–エナンチオマーではこうした促進が起こらないことを明らかにしている。これらの論文は、神経膠腫形成を理解するための枠組みを確立し、ヒト腫瘍でのゲノム的変化とエピゲノム的変化の間の相互作用を明らかにしている。
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上記の参考文献は省略し、続けます・・・。見難くてすみません。
急性骨髄性白血病 - IDH1/IDH2 阻害剤出揃う Ivosidenib FDAへ承認申請受(他のがんに対応したものもありますが、ここでは急性骨髄性白血病に特化したものを挙げています)
 
んー。耐性がつくのは、チロシンキナーゼ分子標的治療薬だけではありませんでしたか・・・。
 
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がん治療:トランスあるいはシスの二量体接触面の変異を介したIDH阻害に対する獲得抵抗性
Nature 559, 7712 |  Published: 2018年7月5日 | 

イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2遺伝子(IDH2)の体細胞変異は、がん代謝物の2-ヒドロキシグルタル酸(2HG)の産生を介した急性骨髄性白血病(AML)の発生に寄与する。エナシデニブ(AG-221)はアロステリック阻害剤であり、IDH2二量体の接触面に結合し、IDH2変異による2HGの産生を阻害する。エナシデニブは、第I/II相臨床試験で、再発性あるいは難治性IDH2変異型AMLにおいて2HGの産生を阻害し、臨床反応を誘導した。本研究では、エナシデニブに臨床反応を示した後に、臨床抵抗性と、がんのプログレッション、および2HGの血中レベルの再発性増加が見られた2人のIDH2変異型AML患者について報告する。治療抵抗性は、IDH2の第二の部位の変異(second-site mutation)のトランスでの出現と関連しており、抵抗性変異がR140Qネオモルフ変異を持たない方のIDH2対立遺伝子に生じていた。このようなトランス変異は、グルタミン316(Q316E)とイソロイシン319(I319M)で生じ、これらはエナシデニブがIDH2二量体に結合する接触面に位置している。これらの変異型疾患対立遺伝子のどちらか一方だけの発現では、2HGの産生を誘導しないが、Q316E変異あるいはI319M変異がR140Q変異と共にトランスで発現すると2HGの産生が可能になり、エナシデニブによる阻害に抵抗性を示す。生化学研究からは、アロステリックなIDH阻害剤に対する抵抗性は、IDH二量体接触面のシスの変異を介しても起こり得ることが予測され、IDH1阻害剤イボシデニブ(AG-120)に対する獲得抵抗性を持つ患者で確認された。我々の結果は、標的治療に対して獲得抵抗性が生じる機構を明らかにするとともに、IDH変異型悪性腫瘍の発生における2HG産生の重要性を明示している。
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んー。これは非常に困りましたね・・・。実は、この研究に続く論文が次の号で発表されていたりします。後日取り上げますが・・・。耐性を崩すには時間がかかりそうです。
 
溜まりに溜まった恒例のネイチャー、次回は、構造生物学より、三日熱マラリア原虫の侵入複合体の構造、を取り上げます。
 
 

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