地球科学: 侵食速度と寒冷な気候の関連性の再調査 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、27号目のネイチャーのハイライトより。

 

 

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地球科学: 侵食速度と寒冷な気候の関連性の再調査
Nature 559, 7712
2018年7月5日

今回、後期新生代の寒冷な気候に応答して山岳地形の侵食が加速したと以前に報告された場所についての調査が行われた。著者たちは、大半の場所では、報告された侵食速度の増大は、実際には、本質的に異なる削剥史のデータを結び付け、侵食速度の空間的な変動を時間的な変動に変換した結果であることを見いだしている。今回の研究の結果は、地域に特有の情報を含む局所的な知見の統合が、全球の侵食速度を変える要因をさらに調べるのに役立つ可能性があることを示唆している。

Letter p.83
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地球科学より、氷河による全球の侵食の再検討されました。
 
山地の侵食は、気候が寒冷化し氷河が発達したため過去数百万年にわたって全球的に加速したと考えられています。今回、データが再評価され、この加速は一部の地域のみに限られていたことが示唆されました。

 

この論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

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地球科学:熱年代学から得られた後期新生代の侵食変動に見られる空間的な相関の偏り
Nature 559, 7712 |  Published: 2018年7月5日 |

地球の表面における侵食速度と全球気候変動の間の潜在的な関連は、ケイ酸塩の風化と有機炭素の埋設が気候に及ぼす影響や、地形進化における第四紀の氷河作用の役割に影響するため、数十年にわたって地球科学における関心の的であった。全世界の堆積速度に基づいて、寒冷化したより変動しやすい気候に応答して後期新生代に全球で侵食速度が増大したことが提案されている。しかし、他の研究では、全球の侵食速度が一定に保たれていた可能性が示されていることから、報告された堆積物の堆積速度の増大は、保存バイアス、堆積の中断、測定間隔の変化に起因することが示唆される。最近になって、全球で集めた熱年代学的データを用いて、山岳地形における侵食速度が後期新生代にわたって2倍近く増大したと推測された。この結果には堆積記録に影響を及ぼす偏りはないと主張されているが、熱年代学的データを平均する方法や氷河作用を受けた地形における侵食の中断に関連する偏りを含むと論じている研究もある。今回我々は、後期新生代に侵食が加速したと報告されている30か所について詳しく調べた。解析の結果、これらの地域のうち23か所では、報告された侵食速度の増大は空間的な相関の偏り、すなわち本質的に異なる削剥史のデータを結び付けて、空間的な侵食速度変動を時間的な増大に変換したことの結果であることが示された。4か所では、増大はテクトニクス的な境界条件の変化によって説明できる。3か所では、局所的な氷河谷の切り込みが駆動した、気候によって生じた加速が記録されていた。今回の知見は、熱年代学的データの分解能が、後期新生代の気候変動が全球的に侵食速度に影響を及ぼしたかどうか評価するには今のところ十分ではないことを示唆している。我々は、地域に特有の情報を含む局所的な知見の統合が、全球の侵食速度を変える要因をさらに調べるのに役立つ可能性があると考える。
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ケイ酸塩 - Wikipedia

堆積岩と地層 - 山賀 進のWeb site(ケイ酸塩の風化)

全有機炭素 - Wikipedia

新生代 - Wikipedia

テクトニクス - Wikipedia

 

熱年代学的データについては、検索すれば各山脈のデータが出ます。しかし、ナショナルジオグラフィックで、熱年代学的データを解読の難しさを指摘している研究者の記事を取り上げています(参照)。今回の研究結果においても、どう評価するかには今のところ十分ではないとしているので、今回の知見をもとに、更に、全球の浸食速度を変える研究を調べることになるかと思われます。

 

溜まりに溜まった恒例のネイチャー、次回は神経科学より、 ニューロンを作ってストレスと戦う、を取り上げます。科学好きの皆様は勿論のこと、科学に興味がない皆様であっても興味をひくものかもしれません。

 

 

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