構造生物学: 新規なアレスチン活性化機構 | Just One of Those Things

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昨日に引き続き、20号目のネイチャーのハイライトより。

 

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構造生物学: 新規なアレスチン活性化機構
Nature 557, 7705
2018年5月17日   

アレスチンはGタンパク質共役受容体(GPCR)の重要な結合相手の1つで、受容体のインターナリゼーションやGタンパク質に依存しない経路を介したシグナル伝達を促進する。受容体へのアレスチンの結合は、受容体尾部のリン酸化を必要とすると広く考えられてきた。しかし今回、アレスチン尾部に依存しない触媒的活性化機構を明らかにした研究が2つ報告されている。M von Zastrowたちは、生細胞中ではアレスチンのこの触媒的活性化機構が、GPCR膜貫通コアとの一時的な結合だけによって作動することを報告している。アレスチンは受容体から解離した後も、活性化した挙動を示し続ける。解離後のアレスチンは膜リン脂質やクラスリンとの相互作用によって活性化状態が安定化され、クラスリン被覆を持つ構造に集積する。受容体も同じようにそこに集積するかどうかは、その後にGPCRの尾部によって決定される。一方、R Drorたちの研究では、分子動力学シミュレーションや蛍光分光法による実験から、GPCRのコアと尾部によって引き起こされる多様なアレスチン活性化機構についての構造情報が示されている。これらの知見は、細胞でアレスチンが機能する際の機構に関する我々の理解を広げるもので、また選択的なアレスチンシグナル伝達を解明する際に重要となるだろう。

Article p.381
Letter p.452
News & Views p.318
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構造生物学で、アレスチン活性化の興味深い眺めが・・・。
 
今回、コンピューターによる研究と生化学的研究によって、Gタンパク質共役受容体によってアレスチンタンパク質が活性化される機構が明らかになり、創薬へ広い道が開かれる可能性が出てきました。
 
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構造生物学:βアレスチンのGPCRによる触媒的活性化
Nature 557, 7705 |  Published: 2018年5月17日 | 

βアレスチンはGタンパク質共役受容体(GPCR)にとって重要な調節因子であり、またシグナル伝達を行うタンパク質である。βアレスチンは、安定で量比が一定なGPCR–βアレスチン足場複合体を形成することで活性化され、それにはGPCRのリン酸化された尾部が必要で、この尾部により反応が促進されると広く考えられている。今回我々は、これに加えて、もう1つ別のβアレスチン活性化機構が存在することを示す。この機構は安定なGPCR–βアレスチン足場複合体の形成やGPCR尾部を必要とせず、GPCRコアとの一時的な結合を介して起こり、この結合によってβアレスチン中の保存されたドメイン間電荷ネットワークが不安定化される。この活性化により、GPCRから解離した後のβアレスチンの細胞膜での捕捉とクラスリン被覆を持つエンドサイトーシス構造(CCS)への集積が促進され、これらの過程には膜のホスホイノシチドやCCSの格子状タンパク質との一連の相互作用が必要である。上流にあって活性化を行うGPCRが無い場合は、CCSへのβアレスチン集積は細胞内ERK(extracellular signal-regulated kinase)応答系のβアレスチン依存性成分因子と関連して起こる。これらの結果は、細胞内βアレスチンの機能がGPCRにより触媒的に活性化されるという、もう1つ別の機構を明らかにしている。
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うふふのふ、笑ってしまうほど、難しい論文にあたりましたね。基礎が頭に入っていないと、さっぱりわからないと思います。頭に入っていると、そう難しくはないです。
 
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構造生物学:GPCRを介するアレスチン活性化の分子機構
Nature 557, 7705 |  Published: 2018年5月17日 | 

Gタンパク質共役受容体(GPCR)を介してアレスチンシグナル伝達を選択的に刺激、あるいは阻害する薬剤の発見は強い関心を集めているが、受容体を介するアレスチン活性化の機構の構造面はいまだに解明されていない。今回我々は、アレスチンについて原子レベルで詳細にわたるシミュレーションを行うことにより、活性化機構を明らかにした。受容体の膜を貫通するコアと細胞質側尾部はアレスチン表面の別々の部位に結合し、それぞれ独立にアレスチン活性化を引き起こせることが分かった。受容体コアのこの予想外の役割とアレスチン表面上の離れた位置間のアロステリックな共役は、部位特異的蛍光分光法を用いて確認された。受容体コアがアレスチンのコンホメーションに与える影響は、主として受容体の細胞内ループとアレスチン本体との相互作用によるもので、受容体結合の際に観察されるフィンガーループの顕著な再編成によるものではない。受容体がない場合、アレスチンはそのC末端尾部が遊離状態にあると活性のコンホメーションをとることが多く、一部のアレスチンが受容体から解離した後も活性を長く保ち続ける理由は、このことで説明できるかもしれない。アレスチンが多様な受容体結合様式によって活性化可能であることを示唆する今回の結果は、GPCRを標的としながら一部のアレスチンシグナル伝達だけに影響を及ぼすという、機能選択的な(作用の偏った)リガンドを設計するための構造基盤となるだろう。
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これらの論文は、ネイチャーのニュースにも取りあげられました。創薬の発見には、重要な論文かと思われます。
 
んー、今回は難しいものが続いたかもしれませんね。私は笑ってしまいますが。しかし、簡単な話、新しい創薬の道を切り開く基盤となる土台です。こうやって解明されていくことによって、効き目が良い上に副作用の少ない創薬が作られるのを祈っているところです。
 
明日は、そう難しくないと思われる細胞生物学のものを取り上げます。(と言いつつ、題名を見て笑ってしまった私でした)
 

 

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