微生物学: Spaidはショウジョウバエの雄を殺す | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、19号目のネイチャーのハイライトより。

 

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微生物学: Spaidはショウジョウバエの雄を殺す
Nature 557, 7704
2018年5月10日  

昆虫の共生細菌の中には、感染を広げるために宿主の生殖を操作するものがある。スピロプラズマ属細菌Spiroplasma poulsoniiはショウジョウバエ(Drosophila)の共生細菌で運動性を持ち、感染した雌の子のうち、雄だけを発生中に殺すが、その仕組みは不明であった。今回、春本敏之とB Lemaitre(スイス連邦工科大学ローザンヌ校)は、この細菌から雄殺しに関わるタンパク質を突き止めてSpaidと名付け、これが細胞死と神経の異常を誘発することを明らかにしている。また、このタンパク質が、性決定に関わる遺伝子量補償複合体を標的とすることも示している。

Letter p.252
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んー、残念ながら、参考になるページがありません。本論文を見てみましょう。
 
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微生物学:ショウジョウバエの共生細菌が持つ雄殺し毒素
Nature 557, 7704 |  Published: 2018年5月10日 |

昆虫に共生する細菌の中には、集団内で広がるために、宿主の生殖を利己的に操作する系統がいくつかあり、多くは宿主の性比を偏らせる。Spiroplasma poulsoniiは、らせん形で運動性を持つスピロプラズマ属のグラム陽性細菌で、さまざまな種のショウジョウバエ(Drosophila)に共生する。S. poulsoniiの顕著な特徴は雄殺しで、感染した宿主である雌の子は、発生中に雄だけが選択的に殺される。S. poulsoniiによる雄殺しは1950年代から研究されているが、その原因となる仕組みは不明だった。今回我々は、S. poulsoniiが発現するタンパク質の1つが雄殺しを誘発することを明らかにし、このタンパク質をSpaidと名付けた。キイロショウジョウバエ(D. melanogaster)でSpaidを過剰に発現させると、雌は死なないが雄は死に、しかも、大規模なアポトーシスと神経異常が誘発され、S. poulsoniiが感染した雄胚で見られる病態が再現された。我々のデータは、Spaidが雄のX染色体上の遺伝子量補償装置を標的として作用することを示唆している。Spaidはアンキリン反復配列と脱ユビキチン化酵素ドメイン1個を含み、これらがSpaidの細胞内での局在と活性に必要である。また、雄殺し活性が低下したS. poulsoniiの実験室変異株には、spaid座位に大きな欠失があることを明らかにした。この研究により、宿主の細胞機構に性特異的に作用する細菌タンパク質が明らかになり、これが、長い間探し求められていた、S. poulsoniiによる雄殺しの原因となる因子だと思われる。
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細菌としては、ウイルスに負けず、興味深いものとはなっていますが・・・。
 
何とも恐ろしい細菌です。昆虫でなくてよかったですね。
 
次回は難しいかもしれない、構造生物学よりニコチン性受容体に関するものを取り上げます。

 

 

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