構造生物学: 反応中のヒトテロメラーゼの構造 | Just One of Those Things

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昨日に引き続き、19号目のネイチャーのハイライトより。

 

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構造生物学: 反応中のヒトテロメラーゼの構造
Nature 557, 7704
2018年5月10日  


ヒト染色体の末端にはテロメアと呼ばれる保護キャップがあり、これは靴ひもの両端についているプラスチック製の小さな覆いに例えられることが多い。テロメアは、細胞が分裂するたびに少しずつ短くなり、結局はそのために分裂が止まって細胞が死んでしまう。テロメラーゼは保護キャップを伸ばすことによって、このような事態を防いでいる。この酵素の構造解明は長く待たれていたが、今回K Collinsたちが、基質と結合したヒトテロメラーゼホロ酵素の構造をクライオ(極低温)電子顕微鏡を使ってついに明らかにした。


Article p.190
News & Views p.174
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構造生物学より、今回は、ヒトテロメラーゼの精密な構造』明らかになりました。

 

テロメラーゼ酵素は、染色体の端にある反復DNA配列の保護キャップを維持することによって、重要な役割を果たしています。今回、ヒトテロメラーゼの構造が分かり、そのアーキテクチャーに新たな光が当りました。

 

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構造生物学:基質に結合したヒトテロメラーゼホロ酵素のクライオ電子顕微鏡構造

Nature 557, 7704 |  Published:  2018年5月10日  |


テロメラーゼは染色体末端にテロメア反復配列を付加する酵素で、ゲノム複製の際に起こるテロメア喪失はこうした付加によって埋め合わされている。テロメアの調節は、ヒトのがんなどの疾患や老化に関係することが分かっているが、テロメラーゼを臨床的に操作するための研究は、構造データがないことで進展が妨げられている。今回我々は、基質に結合したヒトテロメラーゼホロ酵素のクライオ(極低温)電子顕微鏡構造をナノメートル以下の分解能で決定した。構造はRNAに柔軟に結合した2つの部分、すなわちテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)と保存されたテロメラーゼRNAモチーフ(hTR)を含む触媒コア部分と、H/ACAリボ核タンパク質(RNP)部分とに分かれることが明らかになった。触媒コアでは、RNAがTERTを囲んで秩序立った三次構造をとり、タンパク質とRNAとの相互作用は意外なほど限られている。H/ACA RNPの方は、2組のヘテロ四量体H/ACAタンパク質と1個のカハール体タンパク質TCAB1からなり、これは真核生物のリボソームやスプライソソーム生合成因子の大きなファミリーの先駆け的な構造に相当する。これらの知見は、ヒトのテロメラーゼ病の原因となる変異を理解するための構造的な枠組みとなり、テロメラーゼに関わる臨床治療に向けた重要な一歩といえる。

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この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。これを契機に妨げられていた研究が進展することを祈ります。

 

テロメラーゼ - Wikipedia

テロメアとテロメラーゼ | テロメア最先端医療医学学会

ミトコンドリア病・テロメア病

 

昔のものですが、ネイチャーの姉妹誌の論文が引っかかりましたので、取り上げます。

 

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テロメア病:ポリ(A)特異的リボヌクレアーゼ(PARN)はテロメラーゼRNA構成要素(TERC)の3′末端成熟を仲介する

Nature Genetics 47, 12 |  Published:  2015年12月1日  | 


PARN遺伝子〔ポリ(A)特異的リボヌクレアーゼをコードする〕の変異は家族性の特発性肺線維症(IPF)や先天性角化異常症を含むテロメア病を引き起こすが、PARN欠損がテロメアの維持を障害する仕組みは解明されていない。本論文では、PARN変異を有する先天性角化異常症の患者由来の体細胞および誘導多能性幹細胞(iPSC)を用いて、PARNがテロメラーゼRNA構成要素(TERC)の3′末端成熟に必要であることを示す。患者由来の細胞も、PARNが破壊された不死化細胞も、TERCレベルの低下を示した。TERC RNAの3′末端の詳細な塩基配列決定により、転写後に獲得したオリゴ(A)尾部(これを有する核RNAが分解の標的となる)の除去にPARNが必要であることが分かった。TERCレベルの低下およびTERCのオリゴ(A)型の割合の増加はPARNの回復により正常化されることから、PARNは細胞でのTERC成熟を制限していることが分かる。我々の結果は、TERCの生合成におけるPARNの新しい役割を実証し、また、PARN変異をテロメア病に関連させる機構を示している。
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Nature Geneticsもネイチャーの姉妹誌で、姉妹紙が今でもどんどん新発刊されていて、今では姉妹誌がどれぐらいあるかわかりません(多過ぎて数えたことがありません)。全部を読むには時間が足りなさ過ぎです(苦笑)。それだけ多い寮となっています(汗;)。

 

さて、明日は宇宙物理学より、磁気再結合についての論文を取り上げます。

 

 

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