神経科学: 怯えたマウスを逃げ出させる脳回路 | Just One of Those Things

Just One of Those Things

Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、19号目のネイチャーのハイライトより。

 

----------------------------------------------------------
神経科学: 怯えたマウスを逃げ出させる脳回路
Nature 557, 7704
2018年5月10日  


マウスは、頭上から迫り来る暗い刺激に遭遇すると、身をすくませるか安全な避難場所に素早く移動するかのどちらかの反応を示す。今回A Hubermanたちは、知覚した視覚的脅威への反応として行動決定をするのに必要な神経回路を解き明かした。腹側正中視床の2つの領域内で活動が高まると、脅威への反応が、すくむまたは隠れるのどちらかから、走り出したり、攻撃的に「尾を打ち鳴ら」したりといった、運動性のより高い状態に移行することがある。著者らは、こうした異なる行動応答は、マウスの覚醒状態によってもたらされる結果であり、腹側正中視床が覚醒レベルを必要に応じて上昇させていると考えている。


Article p.183
News & Views p.172
----------------------------------------------------------

 

神経科学より、今回は、防御戦略を制御する結び付きを解き明かした論文です。

 

脅威にさらされると、大半のマウスはすくむか隠れるが、一部のマウスはより攻撃的に反応します。今回、こうした行動の選択の根底にある脳の回路が解明されました。

 

----------------------------------------------------------
神経科学:正中視床回路は視覚的脅威に対する反応を決定する

Nature 557, 7704 |  Published:  2018年5月10日  |


自身の内部状態と迫って来る脅威の視知覚とを統合して、適応的な行動反応を引き起こす仕組みは分かっていない。マウスは、視覚的脅威に対して、その場で身をすくませるか逃げ場を探すかのいずれかの反応をする。今回、腹側正中視床(vMT)の2つの核、剣状核(Xi)と結合核(Re)が、視覚的脅威への行動反応を制御する回路網の重要なハブとして働くことが分かった。Xiから基底外側扁桃体への投射は、脅威に対して、すくみのような自身を目立たなくする反応を促すのに対し、Reから内側前頭前野への投射(Re→mPFC)は、脅威に対して、例えば尾の打ち鳴らしのような、自身を目立たせる、挑戦的でさえある反応を促す。またRe→mPFC経路の活性化は、自己報酬的に自律神経性の覚醒も上昇させる。従って、内部状態は、知覚した脅威に対する反対の行動反応のカテゴリーのどちらかに翻訳されるが、vMTはそのやり方を偏向させるという重要な役割を持つ。これらの知見は、恐怖症や心的外傷後ストレス、嗜癖など、覚醒状態や適応的意思決定の障害を理解する上で意味を持つかもしれない。

----------------------------------------------------------

 

この論文はネイチャのニュースにも取り上げられました。

 

正中視床回路の画像

 

これらの知見は、恐怖症や心的外傷後ストレス、嗜癖など、覚醒状態や適応的意思決定の障害を理解する上で意味を持つかもしれしれません。が、このほかにも、認知行動療法や周囲の対応、ホームレスの犬や猫の保護や里親など、実生活に役立てることが出来るかもしれません。

 

明日は、構造生物学より、ヒトテロメラーゼについてのものを取り上げます。

 

 

ペタしてね