神経科学: パーキンソン病モデルを再評価する | Just One of Those Things

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19号目のネイチャーのハイライトより。

 

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神経科学: パーキンソン病モデルを再評価する
Nature 557, 7704
2018年5月10日  


大脳基底核の間接的な経路および直接的な経路での調整された活動は、運動に極めて重要だが、その相互作用の本質(拮抗的か、あるいは並列的か)は不明である。M Schnitzerたちは今回、持続的な画像化法を用いて、マウスの線条体に集団活動を見いだし、運動中、両方の経路に局所的な活動クラスターが見られることを明らかにしている。ドーパミンの喪失(パーキンソン病の病理を模倣する)は2つの経路間の活動を不均衡化し、局所的な空間動態を乱した。ドーパミンの喪失を回復させたり、ドーパミンを過剰なほど高いレベルで維持したりするといった薬理学的処理を行うと、神経活動の時空間的プロファイルが変化し、これらは対応する運動能力の変化と一致していた。


Article p.177
News & Views p.169
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神経科学より、パーキンソン病のモデルの再検討を行った論文です。

 

従来のモデルでは、運動に正反対の影響を及ぼす2つの神経経路での活動レベルが、パーキンソン病では不均衡になると考えられています。今回、マウスの分析によってより複雑な実態が示されました。

 

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神経科学:パーキンソン病状態とジスキネジア状態における正反対の神経集合動態

Nature 557, 7704 |  Published:  2018年5月10日  |


パーキンソン病におけるドーパミンの喪失は、大脳基底核の線条体有棘投射ニューロン(SPN)の直接的な(dSPN)経路または間接的な(iSPN)経路で、それぞれ活動の抑制または亢進を誘導することにより運動を阻害すると考えられている。パーキンソン病のドーパミン前駆体L-DOPAによる治療で引き起こされるジスキネジアなどの運動過多異常の根底には、これと反対の不均衡がある可能性がある。本研究で我々は、行動中のマウスで、ドーパミン喪失の前後ならびにL-DOPA誘発性のジスキネジアにおいて、数千のSPNをモニタリングした。通常、dSPNとiSPNの混成クラスターは運動の前に共に活性化する。しかし、ドーパミンの喪失はSPNの活動率を不均衡化し、運動を担うiSPNクラスターを阻害した。臨床効果と一致して、L-DOPAやD2ドーパミン受容体の活性化は、D1ドーパミン受容体の活性化よりも効果的にこれらの異常を回復させた。L-DOPA誘発性のジスキネジアではこれと反対の病態生理が生じ、この状態ではiPSNは活動の低下を、dSPNはクラスター化しない過剰な活動を示した。従って、SPN活動の時空間的プロファイルと活動率は共に線条体の機能に必須であると見られ、大脳基底核の障害に対する次世代治療法では、線条体の活動の2つの側面の両方を標的とすべきだと考えられる。

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パーキンソン病におけるドーパミン作動性細胞死経路の理解

 (※註:無料観覧が6回までしか出来ません)

ドーパミンD1受容体の消失がパーキンソン病の「無動」を引き起す

パーキンソン病 : 疾患情報 | iPS Trend - 科学技術振興機構

 

パーキンソン病の治療を目指していると言えば、京大のiPS細胞の研究をすぐに思い浮かべてしまいます。今回、再検討が行われ、次世代治療法の標的を提示されました。パーキンソン病といえば「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のマイケルを思い出されますが、その他にも著名人がおります。EW&Fのモーリス・ホワイト親父さんもそうでした。根治できるよう研究が進むことを祈ります。

 

明日も、神経科学を取り上げますが、行動の脳回路についてのものを取り上げます。

 

 

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