肝臓移植のライフライン:氷で冷やさず栄養素を体温で灌流させる移植臓器保存システム | Just One of Those Things

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昨日に引き続き、18号目のネイチャーより、カバーストーリです。

 

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Cover Story: 肝臓移植のライフライン:氷で冷やさず栄養素を体温で灌流させる移植臓器保存システム
Nature 557, 7703
2018年5月3日 


肝臓移植の成功を制限する重要な要因は、ドナー臓器の入手可能性と質である。今回D Nasralla、C Coussios、P Friendたちは、移植前の肝臓の新しい保存法を調べた臨床試験の結果を報告している。通常ドナー肝臓は氷冷保存されるが、この方法では臓器が損傷する可能性がある。彼らは、正常体温機械灌流(NMP)と呼ばれる手法を利用してこの問題に取り組んだ。この方法は、ドナー臓器を体温に維持し、酸素が少なくなった血液を肝臓から灌流装置に取り込み、装置内で酸素を供給し不可欠な栄養素を加えてから、ポンプで肝臓に送り戻す。この手法によってより多くのドナー肝臓を移植できるようになり、保存期間は最大で54%長くなったにもかかわらず、移植片の損傷が50%低下した。著者たちは、NMPによって移植手術に利用できる臓器の数が増えると期待している。


Article p.50
News & Views p.40
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お手柄です。間違いなく、ネイチャーの表紙になり、カバーストーリーに取り上げられました。

 

肝移植を待つ人々は、移植臓器が見つかる前に死亡することがあり、移植臓器が得られても質が悪ければ、移植に失敗するリスクがあります。肝臓を保存する装置によって、この状況が改善される可能性が出てきました。

 

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医学研究:肝臓移植における正常体温保存の無作為化試験

Nature 557, 7703 |  Published:  2018年5月3日  |


肝臓移植は非常に成功を収めている治療の1つだが、提供臓器の不足により厳しい制約を受けている。しかし、提供臓器となり得る臓器の多くが使用できていない。それは最適な状態でない肝臓は従来の冷蔵保存に耐えられず、術前に臓器の生存能を評価する信頼性の高い方法がないためである。正常体温での機械灌流は、肝臓を生理的状態に保ち、冷却を避け、回復と機能試験を可能にする。今回我々は、220件の肝移植での無作為化試験において、従来の単純冷蔵保存に比べ、正常体温保存では、器官廃棄率は50%低く、平均保存期間は54%長いにもかかわらず、肝細胞酵素放出で測定される移植片の損傷が50%少ないことを示す。胆管合併症、移植片生着率、患者生存率には有意差は見られなかった。もし臨床応用に進めば、これらの結果は肝移植の転帰や、移植待機患者の死亡率に大きな影響があると思われる。

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この論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

是非とも、臨床応用に持ち込みたいものです。実現できるよう心から祈ります。

 

明日は19号目に入り、神経歌学よりパーキンソン病についてのものを取り上げます。

 

 

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