分子生物学: SAMHD1が炎症から細胞を守る仕組み | Just One of Those Things

Just One of Those Things

Let's call the whole thing off

18号目のネイチャーのハイライトより。

 

----------------------------------------------------------
分子生物学: SAMHD1が炎症から細胞を守る仕組み
Nature 557, 7703
2018年5月3日 


SAMHD1タンパク質は、ウイルス感染から細胞を守り、がんの発生や慢性炎症にも関わっているとされるが、これらの作用の基盤となる機構は解明されていなかった。今回P Paseroたちは、ヒト培養細胞で複製ストレスが認識されると、SAMHD1がMRE11ヌクレアーゼを活性化することを明らかにしている。MRE11は停止した複製フォークにおいて、新生DNA鎖を分解することにより、複製フォークは複製を再開できるようになる。SAMHD1を持たない細胞では、長く停止したままの複製フォークから短い一本鎖DNA断片が遊離し、これが細胞質ゾルへと出てcGAS–STING複合体を活性化する。この複合体が、I型インターフェロンのような炎症促進性遺伝子の発現を亢進させる。


Article p.57
News & Views p.34
----------------------------------------------------------

 

分子生物学より、不完全な複製が炎症をもたらすことがわかりました。

 

不適切な細胞の炎症は、疾患の原因になることがあります。今回、SAMHD1タンパク質が、新たに複製されたDNAが核から放出されるのを妨げ、望ましくない炎症誘発性応答を抑えることが分かりました。

 

----------------------------------------------------------
分子生物学:SAMHD1は停止した複製フォークで働き、インターフェロン誘導を防ぐ

Nature 557, 7703 |  Published:  2018年5月3日  |


SAMHD1はこれまでに、細胞をウイルス感染から守るdNTPアーゼであることが明らかにされている。SAMHD1の変異は、がんの発生やアイカルディ・ゴーティエ症候群という重篤な先天性の炎症性疾患に関係することが分かっている。しかし、SAMHD1ががんや慢性炎症を防ぐ仕組みは不明である。今回我々は、ヒト細胞株で、SAMHD1がMRE11のエキソヌクレアーゼ活性を刺激して、停止した複製フォークにおける新生DNAの分解を促進することを明らかにする。この作用により、ATR–CHK1チェックポイントが活性化され、停止した複製フォークが複製を再開できるようになる。SAMHD1を欠失した細胞では、停止した複製フォークから一本鎖DNA断片が遊離して細胞質ゾルに蓄積し、cGAS–STING経路を活性化するため、炎症促進性のI型インターフェロンの発現が誘導される。このように、SAMHD1は複製ストレス応答に重要な役割を担っており、停止した複製フォークからの一本鎖DNAの遊離を抑えることによって慢性炎症を防いでいる。

----------------------------------------------------------

 

この論文はネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

今回は、がんの発生や、炎症性疾患に関わる論文です。今回は、論文での説明で、ほぼわかるんじゃないでしょうか。わからないことがありましたら、コメントやメッセージ等でお知らせください。追記で再度UPいたします。

 

一見関係のなさそうな機構が、がんやその他の疾患の解決口になることが多くあります。治療法がどんどん改善されることを祈ります。

 

明日は、難しいかもしれない、構造生物学からです。

 

 

ペタしてね