量子物理学: エンタングルメントのスケールアップ | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、17号目のネイチャーのハイライトより。

 

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量子物理学: エンタングルメントのスケールアップ
Nature 556, 7702
2018年4月26日 


量子エンタングルメントと呼ばれる非古典的相関の生成、操作、検出は、量子光学、量子センシング、量子情報などの研究分野において十分に確立された作業である。それにもかかわらず、エンタングルメントの観測や保存が困難になるスケールがある。特に顕著なのは、当該のエンタングルした物体が巨視的になったり、エンタングルした物体を隔てる距離が大きくなったりする場合である。今回2つの論文によって、非古典的相関を生成し研究できるスケールを実験的に拡張したことが報告されている。S Gröblacherたちは、2つのチップの間に渡したナノ構造のシリコンの梁の形をした、20 cm離れた2つの光機械振動子をエンタングルさせており、また、M Sillanpääたちは、おのおのが約1012個の原子からなる2つの大きな機械振動子を定常状態にして、エンタングルメントの寿命を長くすることで、それらのエンタングルメントを実現している。今回のこうした結果は、量子力学の基礎的検証、量子ネットワーク、精密測定のさらなる進歩への道を開く可能性がある。


Letter p.473
Letter p.478
News & Views p.444
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今回の2つの論文は、ネイチャーのニュースにも取り上げられました。

 

簡単に言えば、機械振動子のエンタングルした振動といったところでしょうが、これじゃぁ、わかりにくいですよね。

 

量子エンタングルメントとは、日本では一般的に知られている「量子もつれ」といえば、ああ、となるかもしれません。

 

量子もつれ - Wikipedia

 

今回2つの実験によって、無数の原子からなる遠く離れた機械系の間のエンタングルメント(非古典的相関)が実証されました。この結果によって、量子物理学の理解が前進すると思われます。

 

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量子物理学:2つの微小機械振動子の間の遠隔量子エンタングルメント

Nature 556, 7702 |  Published:  2018年4月26日  |


エンタングルメントは、離れた構成要素の間で不可分な量子相関が共有されるという量子論の本質的な特徴であり、量子ネットワークの重要なリソースである。特に重要なのは、量子メモリーとしても機能し得る遠く離れた物体の間でエンタングルメントを分配する能力である。この能力は、温かい原子蒸気や冷たい原子蒸気、個々の原子やイオン、固体系の欠陥などの系を用いて、すでに実現されている。実用的な通信用途では、特定の動作波長、広帯域幅、長いメモリー寿命などの有利な特徴をいくつか組み合わせる必要がある。本論文では、微細加工のみで作られたナノ構造のシリコンの梁でできたチップベースの光機械共振器という形の固体プラットフォームについて報告する。我々は、2つのチップの間に渡した20 cm離れた2つの微小機械振動子の間に、エンタングルメントを生成し実証した。エンタングルした量子状態は、1550 nm付近の波長に設計された光場によって分配される。従って、今回の系は、従来の光通信帯域で動作する現実的な光ファイバー量子ネットワークに直接に組み込むことができる。今回の結果は、シリコンフォトニクスに基づく広域量子ネットワークの開発への重要な一歩である。

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ついに、光ファイバー量子ネットワークが実現しそうです。次を見て見ましょう。

 

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量子物理学:大きな機械振動子の安定化されたエンタングルメント

Nature 556, 7702 |  Published:  2018年4月26日  |


量子エンタングルメントは、系の間に任意に大きな距離の隔たりがあっても、互いを独立には記述することができない現象である。エンタングルメントは、確かな理論的・実験的基盤を持ち、量子コンピューテーション、暗号学、計測学を含む多くの新しい量子技術を支える重要なリソースとなっている。エンタングルメントは、光子、イオン、電子スピンなどが関与する微視的スケールの系で、もっと最近ではマイクロ波デバイスや電気機械的デバイスにおいて実証されている。しかし、巨視的スケールの物体の場合、エンタングルメントが環境擾乱の影響を非常に受けやすく、巨視的スケールの物体の質量中心運動のエンタングルメントの生成と検証という目標は、まだ実現されていない。今回我々は、それぞれ1012個の原子で構成される2つの大きな微小機械振動子を運動物体として用い、これらの振動子をマイクロ波周波数電磁共振器と結合させ、これを用いて質量中心運動のエンタングルメントを生成し安定化することで、そうした実験的実証を行ったことを報告する。我々は、相関した機械的変動の測定と共振器から放出されるマイクロ波の解析を組み合わせて、定常状態のエンタングルメントの存在を推測する。今回の研究は、エンタングルした物理系の範囲を定性的に拡張し、量子情報処理、精密測定、量子力学の限界の検証に影響を及ぼすものである。

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量子もつれといえば、わかりやすくいえば、新スタートレックによく出てくる量子テレポーテーションですね(笑)(参考

 

「量子エンタングルメント」でググっていただければ、量子もつれに関する情報が数々出てくるので、興味がある方は、是非ググってみてください。中には量子もつれが相対論を脅かす | 日経サイエンスなんてのもありますが、現実的に困るのは、アインシュタインよりも、現実に生きている私たちでしょうね。引っ越したままダンボールから出していない本の中にボーアの本もありますが(笑) 個人的には、アインシュタインも、ボーアも、状態によって両方ありだと思います。量子力学で一番怖いのが”破れ”です(対称性の破れ - Wikipedia)。

 

さて、明日は、地球科学より、余震に関するものを取り上げます。

 

 

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