神経科学: フェレットでより良い脳発生モデルを作る | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、16号目のネイチャーのハイライトより。

 

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神経科学: フェレットでより良い脳発生モデルを作る
Nature 556, 7701
2018年4月19日 


ヒトの大脳皮質発生に関わる遺伝子群は、小頭症患者の研究から見つかってきた。しかし、皮質がはるかに小さいマウスモデルでのこれらの遺伝子の研究から得られる手掛かりは限られている。今回C Walshたちは、マウスよりはるかに大きい皮質を持ち顕著な脳のしわが見られるフェレットで、小頭症で最も一般的な劣性(潜性)遺伝子ASPMのノックアウト個体をゲノム編集により作り出した。ASPMノックアウト個体では、皮質表面積が著しく減少しており、これは発生中に未分化な前駆細胞が移動したためであるようだ。この小頭症フェレットモデルは、マウスモデルよりも、ヒト疾患で観察されるものをよりよく模倣しており、ヒトの皮質拡大の機構に関するより良い手掛かりが得られるだろう。


Letter p.370
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フェレットでよりよい手がかりが得られるとは、意外です。

 

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神経科学:Aspmノックアウトフェレットから明らかになった大脳皮質サイズを統御する進化的機構

Nature 556, 7701 |  Published:  2018年4月19日  | 


ヒトの大脳皮質は、サイズの大きさと豊富な脳回形成(しわ)によって他と識別される。しかし、皮質のサイズと構造をもたらす進化的機構については分かっていない。皮質を拡大する発生過程に必須の遺伝子群は、ヒト原発性小頭症(脳サイズ減少および知的障害と関連する疾患)の遺伝学的研究により特定されているが、皮質にしわがなく、皮質サイズがヒトの1000分の1しかないマウスでのこれらの遺伝子の研究から得られる手掛かりは限られている。最も一般的な劣性(潜性)の小頭症遺伝子であるASPM(abnormal spindle-like microcephaly-associated)の変異は、ヒトでは皮質体積を50%以上減少させるが、マウスの脳ではあまり影響が見られない。これはおそらくASPMの進化的に異なる機能を反映したものであろう。今回我々は、ゲノム編集により、フェレット(Mustela putorius furo)でAspmの生殖系列ノックアウトを作出した。フェレットの皮質はマウスのものよりも大きく、脳回があり、神経前駆細胞の多様性が高く、タンパク質配列の相同性もヒトASPMタンパク質に近い。Aspmノックアウトフェレットは、重度の小頭症(脳重量が25~40%減少)を示し、これは、ヒト患者で見られるのと同様に、皮質の厚みに顕著な変化は見られないが皮質表面積が減少していることを反映しており、「皮質単位」の減少が示唆される。Aspmノックアウトフェレット胎仔の皮質では、脳室の放射状グリア細胞の外側脳室下帯への非常に大きな早期移動が見られた。外側脳室下帯では細胞の多くは外側放射状グリアに似ていた。外側放射状グリアは神経前駆細胞のサブタイプの1つで、マウスでは基本的に存在せず、霊長類では大脳皮質拡大に関わるとされている。これらのデータから示唆される進化的機構では、ASPMが脳室放射状グリア細胞の脳室表面に対する親和性を制御し、従って、脳室放射状グリア細胞(最も未分化な細胞タイプ)の外側放射状グリア細胞(より分化した前駆細胞)に対する比を調節することによって、皮質拡大を調節していると考えられる。

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放射状グリア細胞とは、発生期の脳で、神経細胞の移動に関与すると考えられているグリア細胞のことです。グリア細胞とは、中枢神経系および腸管神経叢のニューロンの間を埋めている細胞で、多くの突起を出して網目を作り、ニューロンを支持し、栄養補給に関与している、神経膠細胞のことです。

 

研究がより進むことを祈ります。

 

明日は細胞生物学を取り上げます。

 

PS:明日は親戚の寄り合いにて、回るのが遅くなるかもしれません。

 

 

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