構造生物学: 胃の酸性化の秘密 | Just One of Those Things

Just One of Those Things

Let's call the whole thing off

昨日に引き続き、15号目のネイチャーのハイライトより。

 

----------------------------------------------------------
構造生物学: 胃の酸性化の秘密
Nature 556, 7700
2018年4月12日


我々の胃液のpHは、何かを食べている時には約1にまで下がって非常に強い酸性になる。こうした状態は、胃のプロトンポンプ、つまりH^+,K^+-ATPアーゼによって引き起こされる。pHのこのような差は、細胞膜内外での百万倍のプロトン勾配に相当する。この環境は消化に重要だが、行き過ぎた酸性化は胃潰瘍などの一連の病気を引き起こしかねない。今回、阿部一啓(名古屋大学)たちは、2種の阻害剤と複合体を形成したプロトンポンプの結晶構造を報告している。この研究により、酸性勾配が形成される機構が明らかになり、より良いプロトンポンプ阻害剤を設計するために不可欠な情報が得られた。


Article p.214
----------------------------------------------------------

 

日ごろから、行き過ぎた胃の酸性化状態で悩まされている方に朗報です。

 

----------------------------------------------------------
構造生物学:胃プロトンポンプの結晶構造

Nature 556, 7700 |  Published:  2018年4月12日  |


胃プロトンポンプのH^+,K^+-ATPアーゼは、胃液をpH 1にまで酸性化する働きを担うP型ATPアーゼである。これは、壁細胞膜を隔てた百万倍のプロトン濃度勾配に対応し、哺乳類組織で知られる最も急峻な陽イオン勾配である。H^+,K^+-ATPアーゼは、胃酸に関係する病気を治療する薬剤の重要な標的である。今回我々は、2つの阻害剤、ボノプラザンおよびSCH28080と複合体を形成し、内腔側へ開いた状態にあるH^+,K^+-ATPアーゼの2.8 Å分解能での結晶構造を示す。2つの薬剤は、結合部位は部分的にオーバーラップしているものの、胃内腔から陽イオン結合部位へつながる経路の中央では明瞭に区別できる結合様式をとっている。この結晶構造から、陽イオン結合部位の密な配置がGlu820のpK_a値を低下させ、胃内のpH 1という環境であってもプロトン放出が十分に可能となるようにしていると考えられる。

----------------------------------------------------------

 

より良いプロトンポンプ阻害剤が一日も早く設計され、使われるようになるとよいですね。

 

明日は、量子物理学を取り上げます。

 

 

ペタしてね