「「インフルワクチンは乳児と中学生には効かない」報道の真偽 」より。
値上がりするインフルエンザ予防接種、価格に見合う効果はあるのでしょうか?
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値上がりするインフルエンザ予防接種、価格に見合う効果はある?
あまり効かないな~と感じる理由、やっぱり受けたほうが良い理由
2015/10/15 大西淳子=医学ジャーナリスト
日経Gooday
厚生労働省の発表によると、2015年は9月の初めから、沖縄を除く日本各地でインフルエンザの患者が報告されています(沖縄は夏でもインフルエンザ患者が発生しています)。
毎年10月に入ると、「インフルエンザ予防接種始めました」というポスターがクリニックに貼り出されるようになります。今年は去年に比べ、予防接種料金が高くなると予想されています。このため、接種を迷っている方も少なくないのではないでしょうか。
■インフルエンザワクチンの効果に影響を与える7つの要因
インフルエンザ予防接種の料金が今年から上がる理由は、予防できるウイルスの種類が増えたからです。
これまでは、2種類(ウイルスの場合には株と呼ぶ)のA型ウイルスと1種類のB型ウイルスに対する免疫を与えるワクチンでしたが、この秋からは、B型が2種類に増えました。B型ウイルスには2系統あり、毎年、どちらが流行するかを予測して株が選ばれてきましたが(参考記事: 「『インフルエンザワクチンは乳児と中学生には効かない』報道は本当か」)、今シーズンからはどちらの系統にも対応したワクチンになるため、「ワクチンを接種したのにB型インフルエンザになってしまった」という人は減るはずです。しかし、その分ワクチンの原価も上がるので、窓口で支払う料金は、接種1回当たり500円程度上昇する見込みです。
果たして、インフルエンザワクチンには価格に見合う効果があるのでしょうか。結論から言うとインフルエンザワクチンは有効ですが、効果の程度はその冬の流行状況により、また、接種を受ける人ごとに異なります。他の予防接種に比べ、インフルエンザの予防接種の効果には、シーズンごとに変動する様々な要素が影響を与えます。それらを以下にまとめてみます。
1)流行すると予想された株と実際に流行した株が違った=効果は下がる
インフルエンザのワクチンは、毎年4月中に、秋冬に流行すると予想されたウイルス株を選び、製造を開始します。予想とは異なる株が流行すれば、期待した効果は得られません。
2)特にA香港型(H3H2)については、想定通りワクチンを作ることが難しい=うまくいかないと効果が下がる
ワクチンは鶏卵(有精卵)を利用して作ります。A香港型のウイルス株は鶏卵の中で変異しやすく(「卵馴化」という)、得られたワクチンが期待通りの免疫を与えない可能性があります。対策として、製造法の改良が進められています。
3)特にA香港型のウイルスは流行期間中に変異することがある=効果は下がる
昨シーズン(2014~15シーズン)は当初、ワクチンが有効なA香港型株が流行していましたが、まもなくウイルスが変異し、ワクチンが効きにくい変異型のA香港型が流行し始め、そちらの感染が大半を占めるようになりました。こうした現象は、日本では10年に1回程度発生しています。
4)小さな子どもは接種を受けても十分な免疫が得られない、高齢者は接種後に十分な免疫を維持できる期間が短い、といった報告がある=それらの集団では効果は比較的低い
接種による利益が最も大きいのは健康な成人です。
5)シーズン終盤にはワクチンによって得られた免疫が低下する=終盤は効果が下がる
10月頃にワクチンを接種した人々の免疫が低下してくる2月以降に、B型が流行する傾向が近年見られています。
6)同じウイルス株の流行が続くと、過去数年間に予防接種を受けた人・インフルエンザにかかった人は、今年予防接種を受けた人と同様に免疫を持った状態になる=見かけの効果が下がる
今年接種を受けた人と受けなかった人の両方が免疫を持っていれば、接種の有無にかかわらずインフルエンザにかかりにくくなり(発症率に差がなくなり)、ワクチンによる発症予防効果は表に現れなくなります。
7)「集団免疫」が成立すれば、接種していない人も感染を避けられる=見かけの効果が下がる
集団の8割以上が予防接種を受けると、接種していない人もその病原体に感染しにくくなる、「集団免疫」という状態になります。この現象は、日本の小中学校で過去に行われていた集団接種のデータの分析などにより明らかになりました。集団免疫が成立すると、予防接種をした人、していない人のいずれも発症率が低くなるために、ワクチンの効果はやはり表に現れなくなります。
インフルエンザが重症化するリスクが高いのは高齢者や乳児、慢性疾患の患者ですが、そうした人々は接種を受けても十分な免疫が得られない可能性があります。鶏卵、鶏肉に対する重症アレルギーの患者は、鶏卵を使って製造されるインフルエンザワクチンの接種に慎重になります。接種すると重症のアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こすため、接種できない人もいます。生後6カ月未満の乳児も予防接種の対象外です。集団免疫が成立している環境は、そうした人々を守ります。
■手洗いは重要だが、あの「予防法」は無意味
そのシーズンのインフルエンザワクチンの効果は、接種開始の時点では不明です。しかし近年、タミフル(一般名:オセルタミビル)やリレンザ(ザナミビル)といったインフルエンザ治療薬が効かない耐性ウイルスが見つかっており、予防の重要性は高まっています。
上記のような、「インフルエンザワクチンの効果に影響を与える要因」を理解した上で、予防接種を受けるかどうかを判断していきましょう。個人的には、効果が毎シーズン変動することを踏まえても、感染リスクを減らすインフルエンザワクチンは、接種した方が利益は大きいと考えます。
予防接種以外のインフルエンザの予防法には、手洗いやアルコール消毒などがあります。詳しく知りたければ、(厚労省のインフルエンザ(総合ページ))が役に立つでしょう。たとえば、「インフルエンザQ&A」の「Q.9: インフルエンザにかからないためにはどうすればよいですか?」をご覧ください。
…読んでみて、「あれ?」と思いませんか。
実は厚労省、少なくとも2011年2月10日以降の文書に、予防策として「うがい」を掲げていません。その理由は、うがいによってインフルエンザの感染を予防できることを示した質の高い研究はないからだと考えられます。
もし、ウイルスを含む飛沫などが口に入り、粘膜に取り付くと、20分以内に細胞内に侵入します。1日に数回の、または外出から帰った時点のうがいは無意味でしょう。
今年は、新型ノロウイルスの流行に対する懸念も高まっています。インフルエンザの代表的な予防策の1つである、石鹸を泡立てて手をもみ洗いする方法は、ノロウイルス感染の予防にも非常に有効です。励行したいところです。
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私は予防接種を受ける予定ですが、みなさんはどうされますか?