「インフルワクチンは乳児と中学生には効かない」報道の真偽 | Just One of Those Things

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基となった論文を読み解く記事があったので取り上げます。


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「インフルエンザワクチンは乳児と中学生には効かない」報道は本当か
基となった論文を読み解く
2015/10/13 大西淳子=医学ジャーナリスト
日経Gooday


 2015年8月30日、ある全国紙に「インフルワクチン:乳児・中学生に予防効果なし 慶応大など、4727人調査」という記事が出ました。生まれて初めての冬を迎える乳児がいる世帯や、高校受験を控えた中学生がいる世帯は、これを読んで「それならインフルエンザの予防接種はしなくていいや」と思ったかもしれません。


 そこで、報道の元になった調査結果をまとめた論文(著者は慶應大学医学部の新庄正宜氏ら、PLOS ONE誌電子版2015年8月28日付掲載)を読んでみました。すると、正確には、この調査においては様々な要因がかかわっているために、生後6カ月~1歳未満の乳児と13~15歳の小児に対するワクチンの効果は「ない」とは言い切れず、「明確に示されなかった」というのが正しい解釈といえるのではないかと考えました。以下、少し長くなりますが調査の概要を紹介します。


■A型のH3N2に対するワクチンは予想通りに作製できず


 著者らは、2013~2014年シーズンのインフルエンザ予防接種が、日本の生後6カ月から15歳までの小児に対してどの程度有効だったのかを調べました。


 この流行期に接種されたワクチンには、A型のH1N1pdm09ウイルス(2009年に新型インフルエンザとして世界的に流行したパンデミックウイルス)に対する免疫を与える株、A型のH3N2(香港型)に対する株、そしてB型の山形系統に対する株、という3種類の株が含まれていました。


 実際に日本でこのシーズンに流行していたウイルスの43%はA型のH1N1pdm09で、ワクチンに含まれる株と一致していました。次に、21%を占めていたのはA型のH3H2の亜型でした。こちらは一見ワクチンとマッチしているようですが、この年のH3H2に対するワクチンは予想通りに作製できなかったため(卵馴化〔*1〕という現象が起きた)、流行したウイルスに対する効果は高くありませんでした。


 残る36%の患者はB型に感染していました。B型は主に「山形系統」と「ビクトリア系統」の2系統に分類できます。このシーズンはB型に感染した患者の7割が山形系統、残りの3割はビクトリア系統に感染していました。


■対象は生後6カ月から15歳までの4727人


 研究者たちは、2013年11月9日から2014年3月31日までに、主に関東の22カ所の医療機関の外来を受診した生後6カ月から15歳までの小児のうち、38度以上の発熱があり、インフルエンザの迅速診断キットを用いた検査(IRDT;A型かB型を区別できる)を受けた患者を選出しました。


 22施設のうち4施設は、A型、B型に加えてH1N1pdm09も区別できるIRDTを使用していていました。IRDTで陽性だった患者はインフルエンザ感染ありとし、陰性だった患者をインフルエンザ感染なしとして対照群にしました。


 それらの患者の予防接種歴、接種回数、症状などを調査し、予防接種を受けたかどうかが曖昧だった患者を除外した4727人について分析しました。このうち876人がA型陽性で、うち66人はH1N1pdm09が陽性でした。1405人がB型陽性でした。2445人はIRDT陰性でした。


 ワクチンの発症予防効果は(1-オッズ比)×100(%)という式を用いて計算しました。オッズ比は(接種を受けたが陽性だった患者の数 × 非接種で陰性だった患者の数)を(接種を受け陰性だった患者の数 × 非接種で陽性だった患者の数)で除して求めます。接種群と非接種群の発症率が同じならワクチンの発症予防効果は0%、接種群の発症者が0人なら発症予防効果は100%になります。


 全体では、ワクチンの発症予防効果は46%でした。A型に対する予防効果は63%、A型のH1N1pdm09に対する効果は77%、B型に対する効果は26%になりました。


■生後6カ月~1歳未満に効果が示せなかった理由は対象人数の少なさ、集団免疫の可能性


 年齢別にワクチンの予防効果を調べたところ、生後6カ月~1歳未満の小児に対する効果は示せませんでした。その理由として、この年齢層の患者数が計215人と少なかったこと(対象者が少ないほど結果のばらつきは大きくなる)、また、乳児の場合、周囲にいる小児や成人が予防接種を受けている可能性が高く、そうであれば集団免疫(*2)により非接種の乳児も感染から守られるため、接種群と非接種群の差が見られなくなること、などが考えられました。


 1歳から12歳までの小児にはワクチンは有効でした。発症予防効果は39%から63%の範囲でした。


 13~15歳に対するワクチンの有効性は示せませんでした。人数が計290人と少なかったうえに、感染者の多くが、H1N1pdm09以外のA型、またはB型に感染していたことがその理由と考えられました。


 日本では、B型インフルエンザに対するワクチンの有効性はA型に比べ低いといわれています。B型は毎年、A型の流行が終息に向かう2月頃から3~4月まで流行する傾向があります。日本人の多くが10月や11月に予防接種を受けるため、B型が流行する頃にはワクチンの効果は低下し始めています。また、近年、山形系統とビクトリア系統の両方の流行が見られていますが、これまでのワクチンはどちらか一方しか予防できませんでした(ワクチンが改良されて、2015年からはこれら両方のB型を予防できるようになる)。


■ワクチンの入院予防効果は51%


 次に、インフルエンザによる入院の予防におけるワクチンの効果を調べました。発症予防の時と同様の式を用いて入院予防効果を求めたところ、あらゆるインフルエンザによる入院予防効果は51%、A型による入院の予防効果は76%になり、ワクチンが重症化を予防することが示されました。


 なお、A型のH1N1pdm09は2009~10年に大流行しており、その後ウイルスに変異はないため、先の流行を経験した小児は、今回ワクチン非接種でもH1N1pdm09に対する免疫を持っていた可能性があります。ゆえに、非接種群が全く免疫を持たない場合であれば、ワクチンの発症予防効果は、今回の結果よりさらに大きくなるとみられます。


 以上が、報道の元となった論文の概要です。インフルエンザ予防接種の効果は年ごとに、また、集団ごとに変動する可能性はあるが、小児への接種はおおむね有効であることを示したものと私は考えます。

 論文のタイトルは「Effectiveness of Trivalent Inactivated Influenza Vaccine in Children Estimated by a Test-Negative Case-Control Design Study Based on Influenza Rapid Diagnostic Test Results」で、全文が、PLOS ONE誌のウェブサイトで閲覧できます。


■大西淳子(おおにしじゅんこ)
医学ジャーナリスト
筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

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尚、テレビの報道では、インフルエンザワクチンが改良で500~1000円値上げした挙句に、品薄との情報が流れています。


これは、製薬会社が4種のウイルスに対応するようにするのが間に合わないために1社のほかは出荷できていないとのことですので、摂取の際は、あらかじめ病院に連絡を取るほうが良いかもしれません。


値上げしたことで、インフルエンザワクチンを接種する人が少なくなるのではないかとの懸念がありますが、受けるかどうかは個人の解釈にお任せします。


私的には、過去に接種せずにA型に感染して家族に迷惑をかけたことがあるので・・・^^;


私が倒れると家族に迷惑をかけるので、私は受けます。


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