『訶梨帝母(鬼子母神) 』から『鬼子母神 』より。
鬼子母神は、子供の成育と安産をもたらす庶民の神です。
インドでは「ハーリティ」と呼び、音を写して「訶梨帝(かいりてい)」、「呵利陀(かりだ)」などと書かれますが、「青色鬼」、「鬼子母(きしも)」、「大薬叉女(だいやくしゃにょ)」などと訳されました。
日本では一般的に鬼子母神といいならわしています。
鬼子母神は、500あるいは1000ともいわれる子供を持った母親であります。
初め、性質が邪悪で、他人の子を奪って食うので、釈迦が鬼子母神の一番可愛がっている末子の愛奴を隠したところ、気が狂わんばかりに嘆き悲しみました。
そこで、釈迦は「大勢いる子供のうち、ひとりいなくてもそのようになる。まして少ない子供のうち、ひとりでもいなくなった親の心はどうであろうか。」と諭しました。
以後、善心に立ちかえった鬼子母神は、子供の変わりにザクロ(吉祥果)を食し、逆に子供を護る神となりました。
鬼子母神の姿は、幼児を懐に抱いて立っているものが多くあります。
座っているものでは、膝の間に幼児を座らせているもの、さらに左手で幼児を抱え、右手にザクロを持つものもあります。
鬼子母神は、江戸っ子に大変親しまれて、庶民の信仰を集めました。
「恐れ入谷(いりや)の鬼子母神」ということばをよく聞きますが、これは東京下谷の真性寺(しんしょうじ)の鬼子母神のことであります。