伎芸天の章 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

伎芸天(ぎげいてん)は、諸芸成就・富楽をもたらす天女です。



『摩けい首羅天法要』ならびに『摩けい首羅大自在天王神通化生伎芸天女念誦法』(伎芸天念誦法)によると、「摩けい首羅天」(大自在天)が天上界において天女たちと楽器を興じて遊んでいた折、突然、摩けい首羅天の髪際から顔容の端正な天女が現れ、その楽器を奏でる伎芸は第一で、これに勝るものがなかったといいます。


ゆえに、富楽を望めばすべてを満足させ、伎芸を素早く成就させる善神とされます。


ちなみに、仏教に入る以前の出自や梵名などは不詳です。



その像の形は、前述の儀軌では、いずれも天衣。瓔珞(ようらく)等で身を飾った天女形で、左手は上を向けて天花(花を盛った皿)を捧げ、右手で裙(裳すそ)をつまむ姿とされます。



こうした像容を説いた儀軌は、平安時代(9世紀)に入唐僧・円仁および恵運によって請来(しょうらい)されたもので、その文言にのっとった図像を恵什(えじゅう)の『図像抄(ずぞうしょう)』や心覚(しんがく)の『別尊雑記』に収録しますが、実際の造像例は現存しないようであります。



なお、奈良・秋篠寺に、天平時代末ころの製作と推定される脱活乾漆像(頭部のみ当初のもので、体部は鎌倉時代の補作)が伝来することはよく知られています。


ただし、その造像は先にあげた関係儀軌のわが国・日本の請来以前にさかのぼるものであり、また、儀軌に説かれた像容とも合致しないことから、これを伎芸天とみなす確証はないといえるでしょう。