初穂料の由来 | Just One of Those Things

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Let's call the whole thing off

神社で御祓いや祈願を受けるときに納める金銭を「初穂料(ほはつりょう)」といいます。熨斗袋にお金を包み、飾り紐である水引の上に「初穂料」、下に名前を書き、神職などに渡します。


初穂とは、その秋はじめて刈り取られた熟した稲穂のことです。早穂、先穂などともいいます。


すなわち、本格的な収穫を前に、そこにいたった感謝と以降の収穫のつつがなき成就への願いをこめて、神に米を捧げていたことが由来です。現在では御祓いや祈願を受けるときに納める金銭にと時代の流れによって現在にも残されています。



その昔、神の加護なしでは生産・収穫は成り立たないと考えられていました。したがって、生命力に満ち溢れた初穂は、人に先じて神に捧げなければならなかったのです。


本来、初穂は、稲・粟(あわ)・稗(ひえ)など穀類全般のそれらをさしますが、稲作が重視された日本では、稲のそれをとくにそうよぶ場合が多いです。


日本の神話的異称が「豊葦原瑞穂国(とよあしはらのみずほのくに)」であることや、稲作の奨励が古代からの国家的方針だったことが示すとおり、日本と稲穂(米)との関係は古くからきわめて強かったのです。


稲の場合、もともと抜いて束ねた稲穂を、祭場を囲む玉垣(たまがき)などにかけて神に捧げたといいます。これは通常の収穫祭(新嘗祭:じんじょうさい;など)に先立つもので、伊勢神宮を始め各地の神社、また民間などでも稲穂祭り、穂かけ祭としてその姿をとどめています。


しかし、初穂=稲穂の形態も次第に変化していきます。穂束から米粒となり、散米(さんまい)といって撒いたり、白紙に包んでおひねりにして捧げたりするようになります。また、炊いたご飯や餅を初穂として神棚に供えるケースも現れます。


さらに、本来、稲などの穀類に限られていた初穂という言葉はしだいにいろいろな生産物・収穫物にまで拡大して使われるようになります。漁労・狩猟・採集により、その年にはじめて得た魚・鳥獣・野菜類などです。


このように、初穂は、その年にはじめてとれた穀物以外の初物をも意味するようになっていきました。


そしてそれがさらに拡大したところに、初穂料という呼称が生まれました。つまり、食物以外の神に納める金銭をも初穂と結びつけて呼ばれるようになったのです。


金銭がなぜ初穂料として初穂と結び付けられたのかについては、時代の流れを見ていけばおおよそ見当がつくかと思います。


人の生活・生命を支える根本は生産であり食物です。そしてそれは先述したように、農耕・漁労・狩猟などの人の生産活動に神の加護が加わったとき(注:神人共同が成立したとき)のみ得られると考えられてきました。だからこそ神への感謝は、食物、それもとりわけ生命力に満ちた貴重な初穂で示されなければならなかったのです。


金銭は必要とはいえ、食を中心に移住が確保されれば、なくとも人は生きられます。しかしその逆はありません。金銭には食物と比べ生命を支える切実な感じが欠けている、という点で金銭は神への供物として、実際的にはともかく理念的にはその役に足りず、初穂の代理の意味しか持ち得なかったのです。


祈願料ではしっくりと来ないことから、神社や神職へ支払われる金銭が、初穂料といわれる理由はここにあるものと考えられています。