就職氷河期世代について考える | (仮)アホを自覚し努力を続ける!

(仮)アホを自覚し努力を続ける!

アウグスティヌスの格言「己の実力が不充分であることを知る事が己の実力を充実させる」

就職氷河期世代について考える
(連合総研主任研究員 鈴木一光)


 今回の11月号には、経済情勢報告が掲載されているが、執筆作業に携わった。執筆作業に当たり様々なアドバイスをいただき、それに基づき様々なデータの加工や分析を行った。こうした作業全部が掲載されるわけではないが、いただいた貴重なアドバイスに基づき加工や分析を行ったデータの中には、掲載されなかったが面白いものがいくつかあった。

 一つ目のデータは、総務省「労働力調査」を用いた、ここ20年余りの15歳以上人口の増減と年代別の正規・非正規の雇用の増減の動向である。バブル崩壊後から2000年代初めにかけて、特に、若者が就職し社会に出始める15~24歳層などにおいて、人口(15歳以上)が大幅に減少(1993年→1998年▲194万人、1998年→2003年▲224万人)する中、正規雇用も大幅に減少(1993年→1998年▲118万人、1998年→2003年▲137万人)、一方で非正規雇用は増加(1993年→1998年+67万人、1998年→2003年+20万人)していた。いわゆる就職氷河期(1993年から2005年頃)と言われる世代の厳しい状況を示すデータである。

 もう一つのデータは、総務省「就業構造基本調査」を用いた、ここ15年余りの正規・非正規を踏まえた年代別の雇用者の所得分布の変化の状況である。どの年代も所得の高い雇用者の割合が減少し、また、最も雇用者数の割合が高い所得帯(所得分布のピーク)における雇用者数の割合が低くなっていたり、さらにはその所得帯が低い所得帯に移動するなどの変化がみられた。特に、いわゆる就職氷河期世代と言われる、現在、30歳代を中心に、非正規雇用数の増加などによりその傾向が顕著にみられた(雇用者(男女計)30歳代:所得分布のピーク 500~699万円23.7%(1997年)→500~699万円14.3%、250~299万円18.9% (2012年)、20歳代:所得分布のピーク 300~399万円24.9%(1997年)→300~399万円18.7%(2012年))。

 この二つのデータから、改めてバブル崩壊以降、若年層(いわゆる就職氷河期世代)を中心に非正規雇用数が増大し、そのことなどにより所得の分布にも大きな影響が及ぼしていたことがわかる。

 現在、日本は人口が減少し、労働力人口も減少し始め、女性や高齢者の活用が喫緊の課題となっている。労働力の量という側面からは、このような課題が浮かび上がってくるのは当然のことかもしれない。先ほどのデータからは、いわゆる就職氷河期世代が以前の世代より少なくなっているのにも関わらず、以前の世代よりも多くの割合の者が非正規として社会に出て、低賃金にあえいでいることがわかる。非正規となると職業訓練の機会に恵まれず、正規への転換も難しいと言われている。労働力人口が減少する中、本来ならば企業の中堅として生産性を高め、活躍をしているはずのこの世代がこのような状況となっている。

 労働力人口が減少する中、労働力の量のみならずいかに一人一人の生産性を高めていくかということも重要となるはずである。日本を支えていかねばならないこの世代を活用し、非正規から正規への転換や職業訓練などにより生産性を高めていくという視点も重要となると思われる。労働力の量という側面から女性や高齢者に目が行きがちになるが、たまたま就職の時期に恵まれなかったこの世代に今一度注目し、現状を把握し、施策等のフォローなどをしていくことも必要となるのではないかと思っている。