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所得格差は拡大する
経済協力開発機構(OECD)「今後50年の政策課題」



 OECDが7月に発表した「今後50年の政策課題」によると、高齢化および新興国の緩やかな失速により、世界の成長率は2010年~2020年の3.6%から2050年~60年には2.4%に鈍化し、イノベーションや技能投資にますますけん引されるようになると推計されている。また、技術進歩が高技能労働者に対する世界の需要を高め、賃金格差を拡大させるため、2060年までにOECD圏の平均的な市場所得格差は、現在OECD圏内で格差が最大である国々の水準に達するとも述べている。


 つまり、一人当たりGDPの増加は、技術の蓄積、とりわけイノベーションと知識をベースとした資産に今後ますます依存するようになり、より高い技術と知識にけん引された成長は、成長それ自体が緊張と不平等を生み出し続けるというトレイドオフが生じるというのである。さらに、構造調整が引き続き行われ、特に同じセクター内の企業間(生産性の低い企業から高い企業へ、環境対策の遅れた企業から進んだ企業へ)と新興国内での調整が進むと、労働者の生活の安泰に及ぼす影響への対処が必要となる。これを放置すると、不平等の拡大と構造調整のコストが、結果として安定と成長への反撃になりかねないと警告する。


 また、金融危機前の20年をみると、ほとんどのOECD諸国で世帯の可処分所得格差が拡大しており、その要因として、資産収入(集中する傾向を持つ)の増大、所得分配的ではない税制と社会給付、世帯構造の変化などを挙げている。しかし、最も大きな要因は、収入そのものの格差拡大にあるとしている。OECD諸国のフルタイム労働者の総収入(賃金)を十分位でみると、第9十分位の上限値は第1十分位の上限値にくらべ、この20年間、増加速度が年率で0.6%上回っている(Braconier et al., 2014)。これは、スキル偏向的技術革新(SBTC)が教育の成果や一人当たりの収入増を相殺してさらに上回ったことを示すと分析している。


 また、今後50年のSBTCの進展ペースの正確な予測はできないが、戦後一貫してそうであったように、スキル偏向的技術革新は進むものとみられ、この仮定に基づけば、OECD諸国は今後50年で収入格差が17%から40%拡大すると推計している。現在、OECD諸国で格差の小さい国(イタリア、スウェーデン、ノルウェー)でも2060年にはOECD諸国の現時点での平均と同じレベルとなり、2060年のOECD諸国の平均は、現在のアメリカ並みのレベルとなるとしている(図1)。つまり、SBTCが進むとすべての所得階層で実質所得は増加するものの、その増加の程度は異なると述べている(図2)。


 成長のためにはイノベーションや技能投資が不可欠となるが、このための政策を進めると所得格差にさらなる圧力をかける可能性がある。このジレンマに対応するためには、効率的な再分配措置と教育政策の実施が極めて重要であると指摘している。具体的には、「教育の機会均等、生涯教育の重視」、「資本と労働の流動性に対応した税制と社会保障制度の改革、資産性所得への課税シフト」などを提起している。