今回の記事は、以前の記事、「アルバン・ベルク ピアノ・ソナタ作品1 ~無調音楽への流れ~」
http://ameblo.jp/kuribo-hajime/entry-10312604022.html
の続編であります。

前回は、調性音楽から無調音楽が体系化されるまでの過渡期の音楽の一例として、「アルバン・ベルク ピアノ・ソナタ 作品1」を取り上げました。そして今回は、その無調音楽を12音技法という方法論によって確立した、アルノルト・シェーンベルクの「ピアノ組曲 作品25」を取り上げます。

では、その12音技法とは一体どういう方法論なのでしょうか?僕も詳細に分かっているわけではないので、ここではごくごく簡単に、僕が分かっている範疇で概略的な説明をさせて頂きます。分かりやすいようにとても単純化していることは、ご理解しておいて下さい。そしてもっと詳細が知りたい方は、いくらでも調べることが(深入りすることが)できると思いますので、研究してみて下さい。

まず調性音楽。基本的には長調では”ド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ,シ”、短調では”ラ,シ,ド,レ,ミ,ファ,ソ”という音階にある7つの音を使用して創られております。これらの音階は隣合う音の音程が必ずしも等間隔ではないため、特殊な旋律的構造、和声的構造が存在することになり、それが調性音楽の特質となって音楽として奏でられることになります。通常我々の周りに存在している音楽がこの調性音楽ですね。

そして無調音楽を方法論として確立した12音技法。これは1オクターヴ内にある全ての音、つまり”ド,ド#,レ,レ#,ミ,ファ,ファ#,ソ,ソ#,ラ,ラ#,シ”の12音全てを使用します。この場合、全て隣合う音が等しく半音となるため、音階と呼べるようなものではなく、ただの音列と表現して良いでしょう。つまり12音が全て等間隔の音程であるため、この音列の中には特別な個性を持った音が一つも無いということになりますね。でこの音列を使った作曲方法を体系化したのがシェーンベルクの12音技法という訳です。

12音技法は次の4種類の音列がもとになります。

1.「基本型」
   1オクターヴの12の音を重複することなく自由に並べた音列。
2.「逆行型」
   基本形を逆から並べた音列。
3.「反行型」
   基本形の音程を鏡状に転回させた音列。
4.「逆行型の反行型」

でそれぞれの型において半音づつずらすと、それぞれ4つの型に音程が半音づつ違う12パターンができますね。つまり、 (4つの型) X (12パターン) = 48 の音列を作ることができます。でこの48の音列を使って、部分を切り取って繋いだり、音の長さをいろいろ変化させたり、そんな操作を駆使することによって曲が創られるのです。
しかし、譜面も何もない状態で理解するのは一苦労だと思いますが、そういうものだと思って頂いておけば、きっと専門書を読むときに助けになるでしょう。

しかし、この手法の場合、音楽の縦の線(つまりハーモニー)に関しては、うまく体系化できていない、という弱点をシェーンベルク自身が認識しており、「無調」という言葉には本人は反発していたようです。

ちなみに、アルノルト・シェーンベルク (Arnold Schoenberg, 1874年 - 1951年)
      アントン・ヴェーベルン (Anton von Webern, 1883年 - 1945年)
      アルバン・ベルク (Alban Berg, 1885年 - 1935年)

この3人は、「新ウィーン楽派」と呼ばれ、師のシェーンベルク及び弟子のベルクとヴェーベルンは、無調音楽および12音技法を開拓し、現代音楽の発展へ大きな足掛かりを創ったと言えるでしょう。

今日の映像は、先程ご紹介した、シェーンベルクが12音技法を初めて全曲で採用した、
ピアノ組曲 作品25から「プレリュード」(1921年)。

そしてヴェーベルンの「ピアノのための変奏曲 作品27」(1936年)
全3楽章で、12音技法により厳格に構成されており、緩-急-緩の順で配列されています。

どちらも毎度おなじみ、グレン・グールドの演奏でお楽しみ下さい!

(全て僕の理解したと思っている範疇で書きました。間違いなどもあるかもしれませんが、ご容赦下さい。)


2011年1月15日追記:
コメント欄にて、「整数比」という言葉を使用していますが、そこは「簡単な整数比」と読み代えて下さい。



シェーンベルク作曲 ピアノ組曲 作品25から「プレリュード」(1921年)


ヴェーベルン作曲 「ピアノのための変奏曲 作品27」(1936年)