19話「死にに行けと言ってるのと同じ」
鬱ノ宮高校の悲劇
第19話「死にに行けと言ってるのと同じ」
ジリリリリリリリリリリ
朝から鬱高校舎内に非常ベルが鳴り響く。
「容器内、温度圧力ともに上昇!」
「燃料棒露出、損傷拡大!」
「溶融、再臨界の可能性はないのかッ」
「弁を開いて○○性ガスを放出します!」
「使用済○○○プール付近から煙が!」
「水素爆発でコンクリート製の囲いが吹っ飛びました!」
「周辺区域で○○○数値急激に上昇中!」
(注)これらのことは実際に起きた、
または起きた可能性が高い事象です。
決してオーバーに煽っているわけではありません。
ジリリリリリリリリリ
非常ベルの音に負けないよう、
教頭の民井弟が拡声器で怒鳴る。
「化学室に近い教室の生徒はただちに避難!
それ以外は教室内に退避してください!」
生徒たちも大声で怒鳴りあっている。
「おーい!どっちなんだよ」
「教室から出るのか出ないのか!」
「言ってる本人もわかってないんじゃねッ?」
ジリリリリリリリリ
ドス黒い液体が校舎から流れ出す。
「○○○汚染水です!」
「川への流出までもうあとわずかです!」
1年生の竹本と梅本が交互に叫ぶ。
化学部3名は簡易な防護服で
なすすべもなく見守っていた。
「部長、撤退しましょう!」
「線量計、振り切ってます!」
だが部長の2年生松本は首を横に降った。
「…鬱高内ならともかく、汚染水を川へ流すわけにはいかないよ。
魚も鳥もたくさん死ぬ。下流のUSA高校にも迷惑がかかる」
「でも! 逃田先生は絶対無理するなって!」
「僕たちの安全が最優先だって!」
竹本と梅本の交互にとりすがる手を優しくはずし、松本は笑った。
「僕が一人で止めに行ってくる。
君たちは逃田先生に一刻も早くこのことを報告して」
「ぶ、部長?」
「部長ォ!」
駆け出した松本は振り返って言う。
「僕はたしかに化学部だけど、釣りも好きなんだ。
本物の釣り師というのは、川を汚さないんだよ」
「部長!」
「部長オォォォォォォオオオッ!」
ジリリリリリリ
煙を吐く化学室を横目に、大人たちも怒鳴りあう。
「漏れ出た汚染水が危険で誰も近づけん?
だから漏れを塞ぎにも行けん?
しかも冷却のため注水も止められん?
…じゃあどうすんだッ!」
またしても堪忍袋の緒が切れたのは民井理事長。
「…ええと。 何ヶ月か何年かして○○○が下火になったら…」
ボソボソ答えているのは化学教諭の逃田。
「なんだとぉ! このまま何ヶ月も何年も
○○性ガスと汚染水を出し続けるつもりか!」
「その間に容器の破損がもっと進んだらどうする!
今でさえ近づけないのに、さらに近づけなくなるんだぞ!」
「そうしたら注水すらできんだろうがッ!
注水できず冷却もできなくなったら被害は今の比ではない!」
「…そりゃそうですけどぉ~」
「今お前が穴を塞ぎに行け、 逃田」
「拒否しますぅ、理事長ォ~
それは死にに行けと言ってるのと同じですぅ~」
「だからそう言ってんだよッ!
お前のほかに誰が行くってんだ!
責任とれっつってんだよッ」
「理事長にそんな命令権はありましぇん~!」
「テメェ今までさんざん高給もらって
安全安心だとホザいていながら
この後に及んでぇぇッ!」
「お、落ち着いてください、兄さん!
生徒が見てます!」
ジリリリリリリリリリリリ
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