鬱ノ宮高校の悲劇 -8ページ目

18話「それぞれの前夜」

鬱ノ宮高校の悲劇
第18話「それぞれの前夜」

右田核栄とその実子翼。
畳敷きの広い道場に正坐して向き合っている。


「未来や子孫のための政治…だと?」
「御意ッ」翼は両手をついたまま答える。



鬱ノ宮高校の悲劇



「ふふん。…よぉく聞け、翼。
ワシは戦前の生まれだ」






「はッ」






「当時の大人どもがワシらに残してくれたものといえば、
焼け野原と瓦礫の山だけだ」
「……は」


「今のこの繁栄はワシの代がゼロから築きあげたものだ。
それをワシらが使い切って何が悪い。 ええ?」
「……」


「未来や子孫のためだと? たわけがッ!
未来は自分の手で掴み取るものだ。
他人の施しなどハナから当てにするなッ!」



鬱ノ宮高校の悲劇



「はぁッ!」






翼は平伏した。


唇をきつく噛み締めながら。





***********



逃田が化学部の生徒を前に言う。


「いいですか~。 優先順位の第1位は、
君たちの被曝線量が限度を超えないことですぅ。


原状回復は第2位に過ぎません~。
わかりますかぁ~?」



鬱ノ宮高校の悲劇

化学部の部長、2年生の松本が言う。




「あ、あの。今まで絶対安全だと言ってきた、
僕たちの責任はどうなるんでしょう?



チェルノブ○リでの兵士たちのように、
命をかけてでも止めるべきものではないんですか?」







「いいえ~。コレは電力の供給を受けてきた、
鬱高生全員が等しく背負うべきものなんですぅ~。

我々だけの責任ではありましぇ~ん」
逃田が念を押す。





鬱ノ宮高校の悲劇


「いいですかぁ。



できなきゃぁ~できなかったぁ~
でいいんですぅ~」










***********



新聞部の部室。いつも通り部員は2名しかいない。


「緑子ちゃん、あたしやっぱり理事長を目指すよ!」

「なんだ突然」


「あたしが理事長になって、鬱高の進路を途中で転換させる!
それって2671年間、誰にも成し遂げられなかったことなんでしょ?」





鬱ノ宮高校の悲劇

「ん? ん。ああ」


緑子はシュークリームを食べながら

面倒そうに答える。












「そうだなぁ。幕末しかり。終戦しかり。
我が高は一度どん底まで行かないと

方向転換がきかない」


「あたしが止める。
そしてUターンしてみせるよ」


「ふん。無理だと思うがの…
まあやってみるがよい」



鬱ノ宮高校の悲劇

「うん。やってみるんじゃないよ。


や・る・の!」





そう言って七雲は

自分のシュークリームを口にほおり込んだ。









そして…運命の朝を迎える。






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ライトノベルもどきの短文小説です。
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