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21話「制御下でしか制御できない」

鬱ノ宮高校の悲劇
第21話「制御下でしか制御できない」



遠くでは民井理事長が携帯電話に叫んでいる。

USA高校に大至急救援を頼め!
そうだ! もう意地を張ってる場合じゃない!

あ、あとEU学園猿故事分校にも連絡を!」


民井教頭も指示に必死だ。


「そうです! USSR高校に支援要請を!


チェルノブ○リではあの高校の対応を小馬鹿にしていましたが、
もうそんなことは言ってられません!


と言うより我々も全く同じように無能でした!
いや、あれ以下かもしれません!」






ジリリリリリリリリ



「待て翼」


「?」
理事長でさえ一目置く、鬱高風紀委員会。


その委員長を呼び捨てにできる人物は、
鬱高広しといえど2人しかいない。

緑子と…前理事長右田核栄だ。


ジリリリリリリリリリリ


「ち、父上!」


2人の関係は祖父と孫、と知らされていた一般生徒たちがざわつく。


もちろん七雲も初耳だ。




鬱ノ宮高校の悲劇



「翼。昨晩言ったはずだぞ。
ワシがつくりあげたものはワシが全て使い切ると」


「……」



核栄は白煙を吹き上げる校舎を仰ぎ見ると言葉を続けた。


「永遠に毒を吐き続ける化け物か。
ワシがともに逝くのにふさわしい道連れだ」


「…父上?」
「翼、お前の命はお前らの代のために使え」


「…!!」


「逃田ぁッ!」
核栄がしゃがれ声で怒鳴る。


ジリリリリリリリリリ


「はぁいい」

少し離れた所から逃田の声があがり、
よろよろとした足取りで右田親子のほうへ近づいて来る。



覚悟は決めたか、逃田ッ!」
核栄が再び怒鳴る。


「…はぁいい。決めたですぅ」
「ほう。珍しく潔いな
逃げの逃田が最後の最期で心変わりか」


「…はいぃ。…理由は…たぶんあなたと同じ…ですぅ」



「ふふん。見せてやるぞ。
ガキどもに大人の生き様をな!」


「今となっては逝きざまですねぇ~」




「…緑子様」 核栄が少女に向き直って言う。


「行ってまいります」


「うむ」 はるかに幼く見える緑子が、不遜な態度で応える。


「頼んだぞ、核栄」

「もったいなきお言葉」


70過ぎの老人が敬語で、女子高生が横柄なタメ口。
その違和感を払拭するだけの迫力が緑子にはあるようだ。



「ち、父上…」
そんな核栄の姿を初めて見た翼もたじろぐ。



「翼、次の世のことは頼む」

「父上ッ!」






ジリリリリリリリリ


耳をつんざくような非常ベルの音が
ひとつの時代の終焉を感じさせる。







「制御下」でしか「制御」できない…
そんな技術は「制御」と呼ぶに値しないのだ。



至極当然のことを学ぶのに、
途方もない歳月と天文学的な金額
そして気が遠くなる数の生き物の命が失われていく。