22話「嘘をつかない仕事はやっぱりいい」
鬱ノ宮高校の悲劇
第22話「嘘をつかない仕事はやっぱりいい」
「理事長!」
スーツ姿の30歳前後の若者が駆けて来て言った。
「式典の準備がもうすぐ整うぞ」
石碑の前にしゃがみこんでいた、
理事長と言われた人物が振り返る。
「わかりました。右田教頭先生」
赤い髪の、やはり30くらいの女性。
髪型は少し変わったが、童顔は高校生の頃そのままだ。
小沢七雲…今や鬱ノ宮高校の若き女性理事長。
理事長を補佐するナンバー2は、あの元風紀委員長右田翼だ。
「あれから15年が経ちました。
皆さんが救ってくれた鬱高は、ようやくここまで回復しましたよ」
七雲は語りかける。
石碑は記された名前は
松本 アキラ
逃田 電一郎
右田 核栄
あの○○事故の際、鬱高の危機を救った3人の名前だ。
3人は事故から3年以内にいずれも癌で他界した。
また、その後陣頭指揮に奮戦した、
当時の民井理事長と弟の民井教頭も
5年後に相次いで癌で亡くなった。
○○○との医学的な因果関係は立証されていない。
急性の○○○障害ならともかく、
晩発性の障害を立証するのは実は不可能に近いのだ。
その意味では「ただちに」身体に影響はなかったし、
「その後も」身体に影響はなかった。
…だが、そんな詭弁を信じる者は今はもう誰もいない。
当時化学室があったあたりは閉鎖され、
15年後の今でも一般生徒立ち入り禁止区域となっている。
もちろん、○○○発電は段階的に縮小されすべて廃止となった。
ただし現段階ですべて廃炉に成功したわけでもない。
○○○廃棄物もすべて消えて無くなったわけでもない。
地中に埋めて後はなるべく考えないようにする、
そんな情けない方法しか今でも見つかっていないのだ。
「地学の先生たちも式典に出席するのよね」
七雲が翼に聞く。
「ああ。竹本教諭は担当の太陽光発電システムで、
梅本教諭は風力発電でそれぞれ表彰される運びだ」
「長かったよね、あれから」
七雲が屋上に敷き詰められた太陽光パネルと、
遠くで回る白い風車群を見渡す。
事故当時の化学部の生き残り、竹本と梅本は今は地学の教諭となり、
新しい発電システムの担い手となっている。
もちろん、○○○の後始末のかたわら、だ。
多忙を極める彼らだが、明るさは昔とは比べ物にならない。
口癖は
「嘘をつかない仕事って、やっぱりいいもんですね」
小沢理事長、右田教頭のふたりは式典準備に慌しい会場に入っていく。
会場入り口に横断幕は
「鬱ノ宮高校 世界ランク第5位復帰記念 式典会場」
このブログは原発に反対する立場から書いた、
ライトノベルもどきの短文小説です。
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