記事:藏所/佐藤 編集・装幀レイアウト:佐藤 2026.07.10 発行 通刊143号
花粉症とオレンジ 文:藏所
私は花粉症だ。
始まりは今から18年ぐらい前に淀川の堤防の近くに住んでいた頃、5月の一番気持ちのいい季節に、朝、目覚めたら目は真っ赤、鼻水ダラダラ、でも熱は全くないといった症状が突如として出始めた。
病院で調べてもらうと、原因は「カモガヤ」。
堤防や公園によく生えているイネ科の雑草だ。
初夏と秋の気候のいい時期に花を咲かせる。
こいつの花粉に反応した典型的な花粉症だった。
それから10年ぐらい経った頃からは、スギ、ヒノキと順に反応するようになって、今では二月の半ばから本格的に暑くなるまでの間と、秋の一時期とで、一年の半分近くを花粉症に悩まされている。
ところがである。
今年の三月の中頃に、三日間ほど急に症状が治まった。
スギからヒノキへの変わり目なのかなぁ、などと勝手に思い込んでいたがどうもおかしい。
例年こんなことを感じたことはない。
色々思い返してみたら、思い当たるのがオレンジ!症状が消えた前日と前々日の夜に合わせて10個程のオレンジを食べていたのだ。
家族旅行の帰りに寄った道の駅で、若くて元気なお姉さんの営業トークに乗せられて、千五百円分も、何の種類かも覚えていないオレンジを買って帰った。
味がとても良かったし、腐らせるわけにもいかないので、二日ぐらい食後にバクバク食っていたのだ。
どうもこれが怪しい。
そこで実験である。
そう思いついた頃には症状が戻っていたので、スーパーで適当にオレンジを買ってきてバクバク食べてみた。
するとやっぱり症状が治まる。
何度か試したが同様である。
オレンジばかり毎日たくさん食べるわけにもいかないので、オレンジの皮を折り曲げた時に出る液体を症状の出る鼻や目に、直接吹き付けたりもしてみた。
(はっきり言ってバカである。)
色々やってみたが、今は一日一個、オレンジを食べて、その時にしぼり汁を顔面と鼻の中にピチャピチャと化粧水よろしくつけている。
ピチャピチャやった直後は、花粉症と同じ様なかゆみが目と鼻に現れるのだが、顔を洗って30分もすれば治まってしまう。
その後は一日花粉症の症状がほとんど出ない。
出たとしても一番悪い時を10としたら、3とか4止まりである。
あれほど苦しんでいた花粉症がオレンジ一個で解決するなんて・・・。 丁度ヒノキ花粉最盛期の頃にこれを始めたが、一番強敵のカモガヤで効果が証明されたら、大々的に発表しようと思っていた。
そして自分でも半信半疑で初夏を迎えたが、効果はバッチリ。
この喜びを是非とも医学誌に発表してもらいたいぐらいである。
花粉症の人全員に効果があるとは思ってはいないけど、たとえ100人に一人だとしても、試してみる価値はあるでしょう。
医学関係者の方には、是非ともこのメカニズムを解明して頂きたいと思う今日この頃である。

・普段見慣れているこの二つがトレードオフでした。
理・想・宮 文:佐藤
近頃、友人との会話で「老後に趣味を持たないと退屈だ」という話題があがります。
その度、今の自分には情熱を持って夢中になれる趣味がないことにあらためて気付きます。
そんな時思い出すのが、『シュヴァルの理想宮』のお話。
1879年頃、フランス南部の田舎町に住む郵便配達夫のフェルディナン・シュヴァルが、仕事中の道でつまずいた変わった形の石に魅了され、それから毎日仕事の配達ルートで目についた石を拾い集めます。
それらを石灰やセメントでつなぎ合わせ、一人で33年の歳月をかけて理想通りの宮殿を築き上げたという実話。 彼には建築様式や建築技術の知識はなく、出来上がったのは、絵葉書や雑誌で見ていた建物のイメージから自分好みの要素をつなぎ合わせて構築した、異形でもあり、唯一無二の美しさを持つ宮殿です。
建築中、村人達からは「あいつは変人だ」などと冷ややかな目で見られていたそうですが、それに構わず理想と情熱を持ち続けて完成させたこの宮殿、壁面には刻印が残されています。
『信じる心の強さを見よ』 私がこのエピソードを思い出した理由。
十代だった私は、自分のためだけに夢想の世界に没入していたシュヴァルの姿を『美しい』と感じ、自分もこうありたいと憧れていたから。
もう一つは、このエピソードを知った時、この理想宮を見たい、もっと知りたいと思い、貪欲に調べていたこと。
インターネットもSNSもなかった当時、思い当たる書店や図書館を片っ端からあたり、手に入れた情報の欠片をつなぎ合わせて理想宮にたどり着いた時のあの感動を忘れていないから。 歳を重ねるごとに新鮮に感じる物事が少なくなり、「何時か何処かで見知った事」ばかりが増えていきます。
夢中になれるものが減っていくのも当然かも知れません。
「ならば外に求めず、自分の内の想像・空想・夢想・妄想を駆使して構築した理想宮の中で戯れる事も、悪くない趣味かもしれない。」なーんてことを、乱歩の言葉を脳裏に浮かべながら考えてみたりするのです‥‥。 『現世(うつしよ)は夢 夜の夢こそまこと』
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