アレルギーと腸内細菌の関係 | 暮らしに虹をかける会

暮らしに虹をかける会

暮らしに虹をかける会(No more 社会毒!!)のブログです

日本で免疫アレルギー疾患を持つ人は全人口の30%以上もいるようで、年々増加傾向にあります。アレルギーにもいろいろありますが、食事性のアレルギーは鶏卵(38.3%)、牛乳(15.9%)、小麦(8%)がアレルギーを誘発する主な原因の食品で、これだけで全体の約60%を占めるそうです。それ以外では甲殻類(6%)、果物(6%)、ソバ(5%)、魚類(4%)、ピーナッツ(3%)、大豆(2%)、ナッツ類(2%)などで、アレルギーを誘発する主な食品はほとんど特定できています。





また、花粉症も年々多く、国民の4人に1人がスギ花粉症と考えられ日本では推定3000万人以上いるとされています。さらに、その中の7割の人が同時にヒノキ花粉症であるともいわれています。





ここで、鶏卵、牛乳、小麦、スギ花粉などの誘発要因をアレルギーの真の原因とするのは早計です。なぜなら、日本国内における花粉症の歴史はまだ50年ぐらいで、食事性のアレルギーも同様の年月しか経っていません。アレルギーとはそもそも免疫の異常反応のことで、外敵以外のものまで過度に反応してしまう症状です。戦後から日本の生活環境や食事内容などさまざまな事が大きく変化しました。衛生環境や抗菌商品から殺菌剤の使用が私たちを取り巻く常在菌の多様性を崩し、腸内環境から皮膚環境などに変化を及ぼしたことはいうまでもありません。


また、現代の社会システムに多大なストレスを抱え込む人も多いはずです。アレルギーの原因は人によってさまざまですし、生活環境によってもさまざまで、特定することはいまだ出来ていません。


ということで、今回はアレルギーと腸内細菌の関係を見ていくことにします。



◎アレルギー症状を緩和する腸内細菌


アメリカのシカゴ大学のネグレ教授率いるグループは食物アレルギーについて研究しており、腸内細菌に食物アレルギーの改善効果がある可能性を発表しました。(Cathryn Nagler et al., University of Chicago Medicine 2014 Commensal bacteria protect against food allergen sensitization)
http://sciencelife.uchospitals.edu/2014/08/25/gut-bacteria-that-protect-against-food-allergies-identified/


常在菌を持たないよう無菌状態で生まれた無菌マウス、腸内細菌を殺菌する抗生物質を投与したマウスの2種類のマウスで実験しました。2種類ともに普通のマウスに比べ、ピーナッツに対して強烈なアレルギー反応を起こしまいた。


ここで、研究グループは、土壌や動物の腸内環境のような酸素濃度が低い環境に生息する嫌気性菌である「クロストリジウム菌」をこの2種類のマウスの腸内に投与しました。そうしたところ、これらのマウスにアレルギー症状が緩和されたのです。


つまり、クロストリジウム菌によりアレルギー症状が抑制されたのです。このときバクテロイデスのような他の細菌では同じ効果はみられませんでした。


研究によると、クロストリジウム菌は、自然免疫細胞(マクロファージ、NK細胞、好中球、樹状細胞など)にインターロイキン22という情報伝達分子を産生させる作用があることがわかりました。インターロイキン22という生理活性たんぱく質は、腸の透過性を低下させ余計なものを腸に吸収させないようにする作用があります。これにより腸からアレルギー成分の血中への吸収を抑え、症状が起きなくなるのです。


※ネグレ教授はこれはまだ最初の一歩にすぎず、それぞれ個人において当てはまるような因果関係はまだ見えず、さらなる研究が必要であると警告しています。


これらは決して完全な解決策ではないと思われますが、大きなヒントにはなるのではないでしょうか。



◎菌に善玉も悪玉もない


クロストリジウム菌は一般には人間が悪玉菌と指定している菌です。そもそも微生物や菌は、地球が30億年以上も前に生まれたときに、最初に誕生した生命体の最小単位です。現存する各生命体は微生物との競争によってではなく、共生によって進化してきました。


本来、菌に良いも悪いもありません。みんなそれぞれ意味があって、地球上にはみんな必要なのです。ただ、人間にとって必要かどうかはそれぞれで違うだけです。たかだか人間のものさしで菌をはかることは不可能です。微生物や菌のバランスを人為的に崩すと必ずどこかで無理が出てきてしまいます。


腸内細菌叢は善玉が多ければよいのではありません。善玉・日和見・悪玉のそれぞれの菌のバランスなのです。(先住民族はこの定説に該当せず、悪玉優勢のバランスでも健康体を保っております(^ ^;))


多様な微生物の世界を私たち人間は取り戻すべきです。地面は土からコンクリートになってしまい、土に触れる機会は少なくなりました。自然界の土壌は微生物の宝庫であり、そこには多様性が広がっています。山の土に触れる、森の香りを嗅ぐ。人間は自然界に生きる動物であり、本来の姿にできるだけ近づくべきです。


※また、こちらのブログサイト『都市生活者の腸内フローラをアフリカ原住民と比較してみたら』 を参考にしてみると、「アフリカ原住民の子供の腸内フローラは、イタリア人の子供と比べて、多様な細菌種から構成されていることがわかりました。これは、病原菌に対する抵抗力を高めるとともに、無害な異物に対する過剰な免疫反応を抑制することで、食物アレルギーなどを防いでいると論文著者らは考えているようです」ということのようです。