『オホーツク核要塞』小泉悠(2024年、朝日新書) | 倉山塾東北支部ブログ

倉山塾東北支部ブログ

倉山塾東北支部は、読書好きな人たちが集まるグループです。楽しみながら知識を深め、情熱を共有し、新たな友人を作ることを目指しています。
このブログではメンバーが執筆した読書感想文をご紹介します。

 

オホーツク核要塞 歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略 (朝日新書)

 

本書のタイトルを見た時に思い出したのが、

秋田県出身の作家・西木正明の

『オホーツク諜報船』です。


この本で描かれているのは

レポ船の話なのですが、

ふと、北の拉致及び工作船について

ふっと思い起こして、

じっと現在の状況を考え込みます。



(流氷観光砕氷船おーろらから撮影されたオホーツク海の流氷)

 

 

原潜、レポ船、工作船。

原潜や工作船は

海の向こうからやってくるもの。

レポ船は海のこちらから出ていくもの。


海というのはどこまでも繋がっていて

目に見える線は引かれていません。


古代に比べて近代の海を越える難易度は

相対的に易しくなったかと思いますが、

大洋を移動するのは、恒星間を移動する感覚に

どこか似ているような気もします。


海は舶来のありがたい物を

運んできてくれた入り口でもあり、

ロクデナシたちの入り口でもあり……。

と、思索の脱線はさておきまして……。


さて、宇宙よりもたどり着くのが難しい、

と言われるのが深海です。


その宇宙の深淵に長時間潜んで

地平線の向こうの敵国まで

核兵器を投射する能力を持つ原子力潜水艦。


その原潜を安全に潜ませるための

「聖域」オホーツク海。


本書はその「宇宙」で行われている活動について

熱量をもって、丁寧かつディープにまとめられています。


そのディープさはオホーツクに潜む原潜のごとし。