我が国は、平和ボケしている―――
本書を読んで、久々にこの思いを痛感しました。
日本の防衛政策に関する話題と言えば、防衛予算増額や、正面装備の話がメインとなっているように見受けられます。
確かに、予算の増額自体は歓迎すべきことですし、正面装備も重要です。
しかし、こと兵站に関する議論というものは、活発にされているとは言い難いのではないでしょうか。
そも、国防・安全保障というものは、軍事を所掌する防衛省のみが考える問題ではなく、国家を挙げて考えなければならない問題のはずです。
然るに、昨今の議論は、あまりに議論の内容が狭すぎ、固定化されています。
経済安全保障などがクローズアップされたりはしているものの、それだけではありません。
もっと広い分野が議論されなければなりません。
例えば、日本の道路や鉄道や港湾や空港と言った施設が、有事を想定した設計がなされたり、法整備がきちんとなされているのでしょうか。
いざとなったら規格の問題で道路が狭すぎて通れなかったり、物資を十分な量運ぶことができなかったり、軍艦が寄港できなかったり、有事の際、軍民共用飛行場に外国エアラインの飛行機が意図的に滑走路に止まったりしたらどうするのか…
他にもたくさんの防衛の「死角」となる問題点が挙げられています。
『「平和」という病』『幻の防衛道路』と同じく、本書も日本の防衛政策の根本を問う内容です。
日本の「死角」を埋められるよう、ますますの努力が必要と改めて感じました。