学生の頃に『戦略論』は読みましたが、リデルハートの為人や戦略思想の背景までは知ることはできませんでした。
その点本書は、リデルハートの評伝ですので、その生涯はもちろん、戦略思想の評価できる点・批判される点なども知ることができました。
さて、本書を読んで一番考えさせられたのは、「日本流の戦争方法」についてです。
本書の中の例を取ると…
「ローマ流の戦争方法」とは、帝国中から集められた富と戦史国家としての市民のエートスを基礎とする陸軍力中心の「直接アプローチ戦略」
「イギリス流の戦争方法」とは、産業革命によってもたらされた財政力と自由主義経済を基礎とする海軍力中心の「間接アプローチ戦略」
「アメリカ流の戦争方法」とは、圧倒的な技術力及び工業力と民主主義を基礎とする空軍力中心の「直接アプローチ戦略」
各国に独自の「戦争方法」がある中、では日本では、何(物質的要素と精神的要素)を基礎とする、何(いかなるパワー)を中心とした、いかなる戦略が立てられるのか。
それには、日本とはいかなる国か、ということを、歴史や文化などあらゆることを総合して考えなければなりません。
また、「日本流の戦争方法」を考えるにあたり、リデルハートの提唱した「間接アプローチ戦略」「イギリス流の戦争方法」は、示唆に富むところが多いのではないでしょうか。
リデルハートの為人や戦略思想にとどまらず、日本の国家としての戦い方まで考えさせられました。
リデルハート-戦略家の生涯とリベラルな戦争観 (中公文庫 い 134-1) | 石津 朋之 |本 | 通販 | Amazon