ジョン・アール・ヘインズ&ハーヴェイ・クレア著 中西輝政 監訳 山添博史/佐々木太郎/金自成 訳『ヴェノナ 解読されたソ連の暗号とスパイ活動』(扶桑社 2019年)読了。
本書は、第二次世界大戦中のソ連の工作員たちの交信記録「ヴェノナ文書」に関する研究書です。
それにしても登場人物が多く、またカバーネームが沢山出てきて、一度読んだだけではとてもじゃないが整理しきれません…
それは換言すれば、それだけ多くの人間がルーズベルト政権内で暗躍し、ソ連の工作が浸透していたということです。
ソ連の工作というのはまことにもって大掛かりであったということが、このことだけでも分かろうというものです。
アメリカでこれほど大掛かりにソ連の工作が行われていたのですから、日本もアメリカ同様ソ連の工作が浸透していても全く不思議はありません。
しかし日本には「ヴェノナ」に相当するものがなく、KGBなどの内部文書が公開されない限り、当時の日本におけるソ連の工作の実態が分からないということです。
そこが分かってくると、日本の近現代史の見直しが進むことでしょう。
本書はそのきっかけとなるものです。
ただし、本書はアメリカの立場からの研究です。
我々は我々の立場からの研究なり検証をしなければなりません。
「ヴェノナ文書」の他にも、戦前の外務省が作成した「米国共産党調書」や「リッツキドニー文書」「ミトロヒン文書」等々、ソ連の工作に関わる資料は膨大です。
それらの検証を通して、新事実がこれからも出てくることでしょうが、いずれにしても本書では「二度と同じ過ちを繰り返さない」ためにどうするか、それを強く意識させられました。
ヴェノナ | ジョン・アール・ヘインズ, ハーヴェイ・クレア, 中西 輝政, 山添 博史, 佐々木 太郎, 金 自成 | 軍事 | Kindleストア | Amazon