升味準之輔『[新装版]日本政党史論 第2巻』(東京大学出版会 2011年)読了。
第2巻では、自由民権運動以来の政党員、就中代議士達の凶暴さがとても印象に残った。
当時の議会などは政治生命どころか、物理的に命が危ういような状況に陥ることも日常茶飯事であったようだ。
今の国会議員の言動からは想像もできないが、
「…政府は多くの乱暴者を雇ってゐるし、民党の側のもんは、『今日は殴られるか、明日は斬られるか、突かれるか』と思ひながらやってゐた。(中略)それこそ、本当の命がけだった…」(p176)
「そのころの政治社会では、暴行することが一種の流行となって、議院内でも暴漢に襲はれることが珍しくなく、繃帯姿で登院する議員も、かなり多かった」(p176)
政府側の人間から見れば、さぞ訳の分からない危険な連中に見えたことだろう。
そんな連中に政権を任せたり、軍事に介入させたりいうことは絶対にできない、と山県有朋が考えても全く不思議ではなく、むしろ当然の反応なのではないか、ということがよく分かる。
もっとも、文官任用令や軍令第一号の弊害についてはよく考えなければならないところと思うが…
危険な連中ではあるが、衆議院では拒否権集団として政府の前に大きく立ちはだかっている壁である。これに対抗するには、自ら政党を作り、衆議院を押さえなければならないと考えた伊藤博文の考えもよく分かる。
伊藤と山県、どちらも正論なのだが、結局この2人の決定的な対立が後の日本の運命に大きな影を落とした。
そのことがよく分かった1冊である。