上念司『経済で読み解く日本史〈平成時代〉』(飛鳥新社 2020年)読了。
上念獄長の最新刊である。
経済で読み解くシリーズは毎回楽しみに読んでいて、待望の一冊だった。
そして、このシリーズは経済の視点から中世以降の日本の通史を学ぶことができる。
一般的には政治史から見ることが多いが、違う角度から歴史を見ると、また理解が深まる。
そうした意味では、本書を含めた経済で読み解くシリーズは非常に参考になるものである。
さて、本書は平成時代を経済の視点から振り返っている。
自分が生まれたのは平成元年であるから、まさに本書で書かれている時代を最初から生きてきた。
高校生ぐらいの頃までには特に日本経済のことなどあまり真面目に考えることなどなかったのだが、こうして改めて振り返ってみると、何とも凄まじい時代を生きてきたのだなと思う。
私の親も含め、私と同世代の子を持つ親は、一向に回復しない経済の中、そして景気が悪いせいで収入も少ない中よくぞここまで我々を一人前の社会人まで育て上げたと思う。
その点に関しては、両親に感謝しなければならない。
しかし、これを美談にしてもよいものだろうか?
子を一人前に育て上げるのは親の責務である。これは、世の中がどんな情勢であろうと、変わるものではない。
しかし、景気が良く経済が成長し続けたならば、日々の暮らしにもう少し余裕ができ、もっと”楽”に子育てができたのではないか?
もっと子どもたちと一緒に過ごすことができ、もっと子どもたちに好きなことを存分にやらせることができたのではないか?
そしてその子どもたちは、一端の社会人になるときに、自分の望む職業に就くことのできる可能性がもっとあったのではないか?
本書を読めば分かる通り、暗いイメージが付きまといがちな平成時代にあっても、景気を回復させ、経済成長をさせるチャンスはあったのである。
しかし、それは悉く潰されてしまった。
日本銀行の誤った金融政策(過度の金融引き締め)と、財務省の誤った財政政策(消費増税)によって…。
デフレ下においては、金融緩和をし、併せて減税をすることがデフレ脱却に必要な金融政策・財政政策である。
アベノミクスは、金融緩和は行った。しかし、それと同時に行うべき減税は行わなかった。むしろ第二次安倍内閣は、政権の座にいる7年の間に、減税どころか2度にわたって増税をしてしまった。第二次安倍政権で、7年の間に消費税は2倍に引き上げられてしまったのである。
これは完全に金融緩和の効果を抑えてしまった。
そして景気は今次コロナ禍の影響も相まって悪くなっていく。
我々平成時代に生まれ育った世代は、親の苦労もその目で見て、かつ不況のあおりを自らの身をもって経験した世代である。
政府の経済政策次第では経験する必要のなかった苦労を見て、経験してきた世代である。
我々が今行動を起こさなければ、こんな馬鹿げた状態がこれからも続く、いやもっと状況は悪くなるだろう。
こんな状況は我々の手で終止符を打たなければならない。
我々よりも若い世代やまだ生まれていない世代、つまり、これからの日本を担う世代にはこのようなしなくてもよい苦労をさせるわけにはいかない。
日本の次代を担う人たちには、希望を持ってもらいたい。そして、明るい未来を与えてやりたい。
だからこそ、今我々ができることをやらなければならない。
この決意を新たにさせてくれた1冊であった。