木下斉『稼ぐまちが地方を変える 誰も言わなかった10の鉄則』(NHK出版新書 2015年)読了。
本書は、著者の「まちづくり」に関する取り組みの実体験と、それに基づく「稼ぐための教訓」が書かれている。
まず本書を読んでいて思ったのは、
「もしもこの本に大学生の頃に出会っていれば…」
ということである。
この本が出版されたのは2015年なので、とっくに社会人であったので元より望むべくもないことなのではあるが、大学生当時、就職先に地方公務員を目指していた時期があった。
そこで小論文などのテーマをざっと見てみると、当然のことながらその中には「地域活性化」というテーマがあった。
「地域活性化」というお題を与えられると、考え方があまりにも固すぎたというか、柔軟性がなかったというか、とにかく「自分が役人の立場なら、どうやって地域活性化を推進できるだろうか」ということを考えたときに、規制緩和や補助金を受け取らずに自分たちの資力で何とかやる、というような発想は当時はできなかった。
事業を成功させるにはカネが要る。そのカネを地方政府が補助金という形で融通することが、事業を成功させるために「いいこと」というか、「必要なこと」と捉えていた節があった(本書を読めばよく分かるが、実際にはそれは完全な間違いなのだが、当時はあまりそのあたりのことに気づいていなかった)。
さて、役人には役人の仕事があるが、それは役人たち自身が「地域活性化」を行う主体であったり、ジャブジャブ補助金を出したりすることではない。
本来役人の仕事は、民間の志ある人々が動きやすいよう、事務手続きがスムーズに済むようにサポートすることなど、いわば裏方の役回りであるし、そうでなければならない。
「第3セクター」という単語も、小さいときはよく聞いてはいたが、成功したものは果たしてどのくらいあるというのか。少なくとも、身の回りで「第3セクター」が成功したなどという話は聞いたことがない。
やはり、自分が住んでいる地域をもっと盛り上げていきたい、地元を元気にしたい、と”本気で”考えている民間の人間こそが「地域活性化」の主体であるべきなのだ。それらの人々が試行錯誤しながらも自由に何でもやってみるということが重要なのだ。
とはいえ、最初から仲間がたくさん集まるわけではない。はじめは志が同じ仲間だけで、小さなことから少しずつやっていくということが重要なのだ。
そして、ある程度軌道に乗り、稼ぐことができるようになったら、儲けの一部を次の事業に再投資する。
このサイクルをどんどん繰り返していけば、理想なのだが。
併せて、ビジョンをしっかりと描いておくことも大事なことだろう。
補助金を頼り、補助金漬けになってしまうということは、裏を返すと補助金という制度に甘えているだけ、ということだ。
…出だしの話から少し逸れてしまったが、いずれにしろこの本は地元を何とかしたい、という人には是非読んでもらいたいと思う。特に、中学生~大学生あたりの人たちには見てほしい。私自身がそうだったこともあるが、本書を読めば、少し世界観が変わってくるのでは、とも思う。
最後に、「地域活性化」に限らず、あらゆることで自発的に行動するということが大事だと改めて思った。そして人に頼らず自分の足で歩けるように努力する、ということもとても大事だと、改めて感じることができた本であった。